“ゼノベ”プロジェクト 築57年の日建ビル1号館、環境改修を竣工

ー ZEB Readyを実現する「環境性能と投資経済性を両立した改修モデル」を検証 ー

(写真左:©伊藤彰[アイフォト]、右:日建設計)

株式会社日本政策投資銀行(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:地下 誠二、以下「DBJ」)、DBJアセットマネジメント株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:窪田 昌一郎、以下「DBJAM」 )および株式会社日建設計(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:大松 敦、以下「日建設計」)は、不動産業界におけるネットゼロの実現を目指し、既存ビルの改修による環境性能向上を通じたCO2削減と不動産価値の両立を図る“ゼノべ(ゼロ・エネルギー・リノベーション)”プロジェクトを推進しています。このたび、“ゼノべ”プロジェクト第一弾として、築57年の「日建ビル1号館」(大阪市中央区)が竣工しました。

  • 新築ビル建設の抑制やGHG(温室効果ガス)排出量削減の要請を背景に、DBJグループと日建設計は“ゼノベ“プロジェクトを開始。環境改修(※1)によるCO2削減と不動産価値向上を目指す。
  • “ゼノベ“プロジェクトにより、環境改修の経済的価値を可視化し、投資判断の材料とすることで、全国のオフィスビルのストック量の大半を占める既存建築物の環境改修市場の拡大を狙う。
  • 2025年3月、第一弾として、不動産証券化スキームを活用した「日建ビル1号館」の環境改修が竣工し、ZEB Ready認証を取得。既存建築物の環境改修に導入しやすい汎用性の高い技術を組み合わせ、省エネ効果を最大化。年間CO2排出量は約58%(137t-CO2)の削減を見込む。
  • 不動産価値の評価手法として、CO2削減量を定量化し、これに炭素価格を掛け合わせることで、環境改修による投資経済性を試算。環境性能の向上が不動産価値にどのように影響するかを可視化し、環境改修を投資機会として位置づける新たな市場形成を目指す。
  • 今後、“ゼノべ”の輪を広げ、環境改修市場の拡大と不動産業界のネットゼロ促進に貢献していく。

既存ビルの環境改修が求められる理由と課題
不動産業界では2030年までに2013年度比51%のCO2排出量の削減が求められていますが、オフィスビルのストックは約70%弱が築20年以上(※2)であり、新築への建替えはより多くのCO2を排出する上、昨今の物価上昇に伴う建設費高騰の影響もあるため、目標達成には既存ビルの環境改修が現実的な選択肢とされています。しかし、環境改修がもたらすCO2削減量等の環境負荷軽減効果は、不動産価値として十分に可視化されていないため、多くのビルオーナーが投資を躊躇するという課題があります。

“ゼノべ”が切り開く環境改修市場 脱炭素投資の新たな形
ー環境性能と不動産価値向上の両立を目指す環境改修モデルを構築
このような状況の中、DBJ、DBJAM、日建設計は、2022年に環境改修モデルの構築と普及・浸透を目的とする協業を開始し、2024年に既存ビルの環境改修を推進する“ゼノべ”プロジェクトを始動しました。本プロジェクトでは、環境性能と経済価値を両立する環境改修モデルを構築し、実践事例を提供するとともに、その効果を不動産価値に反映し可視化することで、不動産市場とGHG排出量削減を結びつけた新たな市場の創出を目指します。これにより、環境改修投資の促進を図り、持続可能な不動産市場の形成を支援します。

築57年の築古ビル、環境改修でCO2削減58%を実現
ー大阪にて“ゼノベ”プロジェクト第一弾「日建ビル1号館」が竣工
大阪市のオフィスビル1,802棟のうち89%にあたる1,603棟が築20年以上の中小ビル(※3)で占めています。大阪・関西万博開催を控え、投資エリアとして注目される大阪エリアにおいて、築57年の「日建ビル1号館」に対し、環境改修を実施しました。本改修では、LED照明や空調効率化、断熱性向上など汎用性の高い技術を組み合わせ、投資効率の高い環境技術から優先的に採用。2024年にZEB Ready認証を取得し、標準的なビル(BEI=1.0)と比較して約58%、年間137t-CO2のCO2削減効果が見込まれています。さらに、自然換気窓の導入や天井高の確保といった居住性やウェルネスを改善する改修も同時に実施。これにより、環境への行動変容を促し、快適性とウェルビーイングの向上を目指しました。

環境改修でCO2削減と不動産価値向上を両立
ー環境改修による不動産価値を可視化すべくCO2削減効果を加味した投資経済性を検証
環境改修投資による投資効果を可視化するため、CO2削減量に炭素価格を掛け合わせた不動産価値及び投資経済性を試算しました。これにより、一般的には追加コストと捉えられる環境改修投資について、投資による経済的な効果を可視化することで、ビルオーナーや投資家の投資判断材料の一つとすることが可能になります。
日建ビル1号館では、ZEB Ready相当の環境改修を実施した結果、CO2削減効果による不動産価値上昇に一定の効果があることが確認できました。

チーム“ゼノべ”、不動産業界の脱炭素化へステークホルダーと連携
今後は、“ゼノべ”プロジェクトへの参画企業を拡大し、環境改修の推進力を強化していきたいと考えています。不動産業界のネットゼロ実現には、不動産・建設業界関係者や行政機関、金融機関等、幅広いステークホルダーの協力が不可欠です。DBJ、DBJAM、日建設計は、今後、それぞれの立場に応じた役割を活かしながら、各ステークホルダーとの対話を通じ、多様な業種・業界の知見を結集し、既存ビルの環境改修の普及のため“ゼノべ”の輪を拡げ、不動産業界の2030年CO2削減目標の達成に貢献します。
2050年ネットゼロ目標を実現するため、“ゼノべ”に賛同・協力いただける企業の拡大に努め、不動産業界の脱炭素化をさらに加速していきたいと考えています。

21世紀金融行動原則 「2024年度 最優良取組事例」において「選定委員長賞」を受賞
ー環境改修の推進と市場変革を評価
“ゼノべ”プロジェクトが、「2024年度 最優良取組事例」において「選定委員長賞」を受賞しました。本賞は、環境・社会課題への優れた取り組みを評価するもので、不動産業界のネットゼロ実現に向けた環境改修モデルの構築と普及に取り組む点が高く評価されました。特に、様々なステークホルダーと連携し、環境改修の費用対効果を実証する姿勢、ビルオーナーやテナントとの対話を重視し、テナント自身の行動変容を促す設計を採用している点が評価されました。また、不動産市場における環境価値の可視化を推進し、社会全体の既存ビルの価値観を転換する可能性を持つ点も選定理由として挙げられています。今回の受賞を機に、“ゼノべ”プロジェクトは環境改修における市場のさらなる拡大を目指し、不動産業界のネットゼロ実現に貢献していきます。

※1:2023年6月にリリースした共同調査にて、“ゼノべ”プロジェクトチームは「環境改修」を次のように位置づけました。「ビルの環境性能(=省エネルギー性等の環境配慮に関連する性能)を高め、ビルの個別性に配慮しつつ、現状よりも環境に配慮したオフィスビルとするための改修工事全体を指す」
※2:第46回省エネルギー小委員会「不動産業界におけるカーボンニュートラルに向けた省エネ・再エネの取組方針や課題・要望」(2024年9月3日)より
※3:ザイマックス不動産総合研究所「オフィスピラミッド2025 東京23区・大阪市」(2025年1月15日)より


2022年11月11日付|日本政策投資銀行グループと日建設計が不動産の環境改修に関する協業を開始
https://www.nikken.co.jp/ja/news/press_release/pj4urv0000005g59-att/20221111.pdf 

2023年6月6日付|不動産ストックに対する環境改修投資の促進に向けて
https://www.nikken.co.jp/ja/news/press_release/2023_06_06.html 

2024年6月5日付|日本政策投資銀行グループと日建設計 既存オフィスビルのエネルギーを“ゼロ”に近づけるリノベーション“ゼノべ”プロジェクト(ゼロエネルギーリノベーションプロジェクト)始動
https://www.nikken.co.jp/ja/news/press_release/2024_06_05.html 

2024年10月30日付|"ゼノベ"プロジェクト第一弾 「日建ビル1号館」テナントリーシング開始-工事現場でお馴染みの「つくし坊や」とコラボした全長14.4mの超大型仮囲い広告も掲出開始-
https://www.nikken.co.jp/ja/news/press_release/2024_10_30.html

<本プレスに関するお問い合わせ先>
株式会社日本政策投資銀行 アセットファイナンス部 電話番号 03-3244-1714
DBJアセットマネジメント株式会社 不動産運用部 電話番号 03-3241-5387
株式会社日建設計 広報室 篠田 陽子 電話番号 080-4928-3855



参考資料
<環境改修による効果>
ZEB Ready認証取得
ー汎用技術の活用で約58%のCO2削減を達成

本プロジェクトでは、汎用性の高い技術を組み合わせた環境改修により、2024年7月に、建築物省エネルギー性能表示制度(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System、以下「BELS」)で「ZEB Ready」の認証を取得しました。今回の環境改修は、特定の技術に依存せず、今後の環境改修においても一定水準以上のCO2削減効果を実現できる可能性を示しています。また、今回の環境改修によって、日建ビル1号館では、年間137t-CO2、標準的なビル(BEI=1.0)と比較して約58%のCO2削減効果(※日建設計による試算)が見込まれています。

■空調のダウンサイジング …高効率空調・換気システム
  • 他事例におけるテナントのエネルギー使用状況を分析し、95%以上のテナントが20W/㎡以下で稼働している点に着目。
  • 冷暖フリー型の高効率ビル用マルチパッケージ空調機を採用し、必要なエネルギー供給を効率化。
  • 外皮の高断熱化を施し、室内機器や照明による発熱量の見直しを実施。
  • これらにより、過剰な空調負荷を抑え、既存の空調システムと比較して合計容量を約40%ダウンサイジング。エネルギー消費の最適化とともに、CO2排出量の削減に貢献。

■照明の効率化 …LED照明の最適配置
  • LED照明の最適配置により約5W/㎡で500Lxを実現。また明るさ検知制御・初期照度補正制御により更なる省エネを実現。
  • 光源には上下回転可能な機構を採用し、室内の明るさ感を最適に制御する照明計画を可能に。これにより、快適性を損なわずにエネルギー効率を最大化。
  • これらにより、標準的なビルと比較して㎡あたり消費電力を約27%削減(※日建設計による試算)。照明負荷の低減とともに、CO2排出量の削減にも貢献。

■断熱性の向上 …木製建具によるダブルスキン化
  • 内断熱+インナーサッシのダブルスキン化により、外皮の断熱性を向上。
  • 内断熱は、屋上・外壁面に吹付ウレタンフォーム断熱材を使用。
  • インナーサッシにはLow-E複層ガラスと木製建具を採用。これにより日射遮蔽を高めるとともに木材により更なる居心地の良さも付加。
  • これらにより、改修前には1.41だったBPI(Building Palstar Index)値を、0.72へ改善。断熱性の向上により、空調負荷の低減とエネルギー効率の向上を実現。
©伊藤彰[アイフォト]

■自然換気システム
  • 階段シャフトを用いた重力式自然換気を採用。
  • 既存のFIX窓を開閉可能な窓に更新。さらに、入居者が室内のランプ点灯をトリガーに窓を開けるよう、行動変容を促すシステムを導入。
  • これらにより、中間期には空調を使用せずとも快適な温度帯の執務空間を実現。冷暖房エネルギーの削減に寄与し、CO2排出量の低減にも貢献。
©伊藤彰[アイフォト]

<環境改修の経済的価値の可視化>
環境に配慮した投資の経済性を評価するため、投資対象物件の基準BEI(Building Energy Index)との差分として算出されるエネルギー削減量をCO2削減量に換算し、炭素価格を掛け合わせる手法を用いて算定・検証を行っています。これにより、環境指標を経済指標に変換し、環境改修による投資効果を定量的に可視化することで、投資判断の参考指標とすることが可能になります。
また、DBJでは2024年度より、環境改修における環境性能と経済性を評価する新たな手法として、CO2削減効果に炭素価格を組み合わせた考え方を試行導入。今後も投資家をはじめとするステークホルダーとのエンゲージメントを強化していく予定です。


このように、環境改修の経済的価値を定量的に把握できる仕組みを構築することで、ビルオーナーの投資判断材料の一つとして活用されることが期待されます。 特に、環境認証の取得が難しい既存ビルにおいても、環境改修による経済的な効果を明確に示すことで、ビルオーナーの投資判断の幅を広げ、環境改修投資の促進を図ることを目指しています。

竣工当時の執務室
高断熱サッシを採用し内部の居住性を担保しつつ、屋外空間へのアクセスを創出。
ベランダには植栽用水栓を配置するなど、利便性とウェルビーイングに配慮した
©伊藤彰[アイフォト]

株式会社日本政策投資銀行について
DBJは、出資と融資を一体的に行う「投融資一体型サービス」をはじめ、お客様のニーズに柔軟に対応し、アドバイザリーやナレッジ、アセットマネジメントなど多様なサービスを提供する政府系金融機関です。1951 年に戦後の復興のために設立した日本開発銀行、北海道東北開発公庫を前身とし、以来、金融フロンティアの弛まぬ開拓を通じて、お客様及び社会の課題を解決し、日本と世界の持続的発展に貢献することをミッションに掲げています。

DBJアセットマネジメント株式会社について
DBJアセットマネジメントは、2006年に国内の資金循環の活性化・金融資本市場の発展への貢献を目的に設立されたDBJグループの資産運用会社です。DBJAMは、「不動産」、「プライベートエクイティ」、「インフラストラクチャー」の3分野を主領域とし、DBJの総合的な金融力を背景としながら、機関投資家のお客様に良質な投資機会・運用サービスを提供しています。

株式会社日建設計について
日建設計は、建築・土木の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来120余年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えするため、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東で様々なプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。
本件に関するお問合わせ先
株式会社日本政策投資銀行 アセットファイナンス部  電話番号 03-3244-1714
DBJアセットマネジメント株式会社 不動産運用部  電話番号 03-3241-5387
株式会社日建設計 広報室  篠田 陽子  電話番号 080-4928-3855

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この企業の情報

組織名
株式会社日建設計
ホームページ
https://www.nikken.co.jp/ja/index.html
代表者
大松 敦
資本金
4,600 万円
上場
非上場
所在地
〒102-8117 東京都千代田区飯田橋2丁目18番3号
連絡先
03-5226-3030

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