2025年4月15日
株式会社 東芝
東芝デジタルソリューションズ株式会社
令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞について
株式会社東芝と東芝デジタルソリューションズ株式会社は、令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰にて、「シミュレーテッド分岐マシンの研究開発」の業績で科学技術賞(開発部門)を受賞し、本日表彰式が文部科学省3階 講堂で行われました。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として、文部科学省が毎年実施しているものです。中でも、科学技術賞(開発部門)は、社会経済、国民生活の発展向上等に寄与し、実際に利活用されている画期的な研究開発若しくは発明を行った者を対象にしており、今年度は56件の応募の中から、22件(79名)が本賞を受賞しました。
今般受賞した内容は、以下の通りです。
「シミュレーテッド分岐マシンの研究開発」
金融・創薬・制御・工場生産の効率化などの社会課題の多くは、膨大な組合せの中から最適な選択肢を見つける「組合せ最適化問題」に帰着します。選択肢の組合せの総数は無数にあるため、全ての組合せを総当たりで確認する方法では、最適な答えを見つけるまでに膨大な時間が必要です。そのため、大規模な組合せ最適化問題を高速に解ける技術が求められていました。
当社は、量子コンピュータの研究を通して、新たなアルゴリズム「シミュレーテッド分岐(SB)アルゴリズム」を発見し、現在のデジタル計算機に実装することで「シミュレーテッド分岐マシン(SBM)」を開発しました。高い並列化が可能なSBアルゴリズムを、GPU(※1)やFPGA(※2)などの並列計算に優れた計算資源を活かして実装したSBMは、大規模な組合せ最適化問題を高速に解くことを可能にしました。
本開発により、組合せ最適化問題を解くクラウドサービスや、GPU実装とFPGA実装のオンプレミスサービスを実現し、事業化しました(※3)。これらのサービスにより、従来の組合せ最適化の技術では実現が難しかった革新的なアプリケーションを開発できるようになります。
本成果は、工場倉庫運営や計算創薬、高速金融取引などの実問題の解決への貢献が期待されています。さらに、本成果はイジングマシン(※4)の研究の進展に貢献し、「振動子ベースのイジングマシン」(※5)という新たな学術分野の開拓にも寄与しています。

シミュレーテッド分岐マシン
令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 受賞内容
所属 |
氏名 |
テーマ |
(株)東芝 総合研究所 マテリアルズ&フロンティア研究センター |
後藤 隼人 |
シミュレーテッド分岐マシンの研究開発 |
(株)東芝 総合研究所 AIデジタルR&Dセンター コンピュータ&ネットワークシステム研究部 |
辰村 光介 |
(株)東芝 総合研究所 デジタルイノベーション技術センター コアテクノロジー開発部 |
遠藤 浩太郎 |
(株)東芝 総合研究所 マテリアルズ&フロンティア研究センター フロンティア技術研究部 |
酒井 良哲 |
東芝デジタルソリューションズ(株) デジタルエンジニアリングセンターソフトウェア開発部第三担当 |
鈴木 賢 |
表彰式の様子
(左から、鈴木 賢、辰村 光介、後藤 隼人、遠藤 浩太郎、酒井 良哲)
(*1) Graphics Processing Unit(GPU)の略称。画像処理向け集積回路で、多数の演算処理部を含む。
(*2) Field-Programmable Gate Arrayの略称。演算処理集積回路の一種で、製造後にユーザーが用途に応じて機能を書き換えることが可能。
(*3) 量子インスパイアード最適化ソリューションSQBM+™
https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/ai-iot/sbm.html
(*4) 組合せ最適化問題を磁性体の数理モデルであるイジングモデルで表現し、そのエネルギー最小状態を探索することで問題の解を得る組合せ最適化専用の計算機。
(*5) 相互作用する多数の非線形振動子の時間発展過程を利用したイジングマシン。光学的・電気的・磁気的・機械的な振動子やデジタル空間でシミュレートされた振動子に基づく様々な方式が提案されている。