【3Dプリンティング×カーボンニュートラル×メディアアートの複合プロジェクト】海の生命感を宿した環境コンシャスな光るベンチ「すいこんぶ」。札幌4丁目プレイスに設置-金沢工業大学



金沢工業大学と鹿島建設株式会社(以下「鹿島」)は、3Dプリンティング技術とCO₂を吸収・固定するコンクリート「CO₂-SUICOM®(※1)」を組み合わせた技術開発に関する共同研究の一環として、鹿島が事業開発した「札幌4丁目プレイス」(以下「4PLA」)に、同技術を活用して製作したベンチを設置しました。





4PLAは2025年4月25日(金)に一部先行開業しており、夏のグランドオープンに向けて館内アートワークの展示公開を順次進めています。
ベンチはアートワークの1つとして、館内の共用空間である「まちのリビング」にアクセスするエントランスの脇(屋外)に設置されました(※2)。
大学内コンペを経て決定した「昆布」をモチーフとした形状や、気温によって色味が揺らぐように変わる照明などが大通エリアに新たな彩りを提供しています。CO₂を吸い込んだ、昆布のようなベンチということから「すいこんぶ」と名付けられました。

【設置場所】 札幌4丁目プレイス(愛称:4PLA)札幌市中央区南1条西4丁目
【Google マップ】 https://maps.app.goo.gl/Gu4kK73KUU7FP7jT7

当プロジェクトについて
当プロジェクトは、金沢工業大学やつかほリサーチキャンパス内にあるKIT×KAJIMA 3D Printing Labにおいて、第1弾プロジェクトである金沢の友禅流しをモチーフとしたベンチ(※3)と第2弾プロジェクトである鹿島の自社保養所内の人道橋(※4)に続く第3弾のプロジェクトとして、環境土木工学科、建築デザイン学科、建築学科、機械工学科、先進機械システム工学科、メディア情報学科など異分野の研究室間連携および鹿島との産学連携プロジェクトとして、2023年秋よりデザイン検討と試作を重ね、実現したものです。

【プロジェクトの背景】
3Dプリンティングの技術は、従来の型枠を用いた施工方法では実現が困難な造形を可能にするものとして建設分野で注目を集めており、研究開発が進んでいます。また、2050年カーボンニュートラル社会の実現に資する技術として、CO₂-SUICOMのような環境配慮型コンクリートの開発も急ピッチで進められています。しかし、それらの社会実装を早期に進めていくためには、両技術を用いて製作した実用的な造形物をできるだけ多くの人が触れられる場所に設置し、その存在を知っていただくと同時に、実際に使ってもらうことでフィードバックを得て、改良・改善を重ねていく必要があります。そのため、鹿島が事業主である商業空間の一角に設置することを目標とし、検討を進めてきました。

【「すいこんぶ」ベンチの特徴】
ベンチは、最新技術による成果物の展示と情報発信という側面の他、公共空間への休憩場所の提供、アートワークとしての都市空間の魅力向上、特徴的なデザインによる場所のアイコン化、動的なライティングデザインによる体験価値の提供、など複数の役割を持ちます。具体的な製作過程の特徴経緯を幾つかご紹介します。

(1)環境コンシャスな形状デザイン
ベンチのデザインには、2023年秋に実施した学内コンペで建築学科の学生から提出があった10作品から選ばれた上位2作品のアイデアが活かされています。1位の作品のコンセプトが「生命×昆布」であり、昆布をモチーフとした生命感を宿したデザインが提案され、そのコンセプトや基本形状が最後まで継承されました。デザインの基本形状には、第1弾の友禅流しのベンチのプロジェクトで開発した、3Dプリンティングにおける効率的な積層とCO₂吸収効率向上を両立する「一筆書き+ひだ形状」のデザイン手法が今回も応用されています。座面部分は透明アクリルとし、内部をのぞき込めると同時に、内底部に組み込まれたIoT照明(後述)がモルタルの積層痕を美しくライトアップします。また、アクリル座面に施した水玉のグラフィックは、昆布が持つ高い光合成能力を表現するため、昆布内部の水分/養分の巡りを抽象的に表したものです。


(2)コンピュテーショナルデザイン×3Dプリンティング
脚部のモルタル部の3次元形状および座面部の水玉グラフィックのデザイン検討ではパラメトリックデザインを多用しています。検討過程では多数のバリエーションを作成する必要があり、多くのアイデアはビジュアルプログラミングによるアルゴリズムを通して生成し、検討しました。そうすることで、イメージした形状の短時間での具現化、精緻な幾何形状の作成、パラメータ調整による柔軟なデザイン変更が可能となります。また、完成予想モデル、3Dプリンティング用モデル、プリンティングパスの生成など、目的に応じたデータコーディネーションが容易な点もプログラミングの利点であり、3Dプリンティングとの接続性が高まります。一例として、設計の最終段階では、ベンチの積層時の傾斜角度について機能性・美しさ・技術的な傾斜限界などの観点から複数の角度パターンのモデルを生成し、検討しました。さらに、デザイン形状の積層可能性を具体的に予測するため、機械学習を用いてモルタルの強度を推定した上で、提案形状に対する積層解析を行い、どの程度まで傾斜をつけた積層が可能か予測することに成功しました。

(3)メディアアートとしてのライティングデザイン
ベンチ内部にはIoT対応のLEDテープライトが組み込まれ、夕方以降の時間帯(17時~23時)は座面内部のIoT照明が発光し、現地の気温に応じてリアルタイムに色相が変化するとともに輝度(明るさ)が時々刻々と揺らぐようデザインされています。昆布が光合成し自然環境と呼応するように、環境と呼応するライティングの実現を通して、海の中の昆布の揺らめきが表現されています。色相は月毎の平均気温付近で基本色のエメラルドグリーンとなり、寒くなると暖色寄りに変化して暖かみある色合いに、暑くなると寒色寄りに変化して涼しげな色合いになるよう設定しています。

(動画)色相や輝度の揺らぎ
全景の動画 https://youtube.com/shorts/nTO7PEJ7Yjo
座面内部の動画 https://youtu.be/PnHTk2N3LdM

【ライティングの特別演出スケジュール】
札幌の街のイベントや時節行事に合わせたライティングの特別演出スケジュールは以下のように設定されています。


1月1日~1月 7日
元旦/新年の始まりの白、雪をイメージ


2月4日~2月11日
雪まつり/淡い水色が揺らめく表現


4月1日~4月 7日
年度始め/薄紫の点滅とグラデーションで桜が咲き散る春を表現


6月4日~6月10日
YOSAKOIソーラン祭り/3 拍のリズムに合わせた光の変化で祭りを表現


7月25日~8月8日
札幌夏祭り/青・ターコイズの色を揺らめかせ夏の海風を表現


10月25日~10月31日
ハロウィーン/オレンジ色の揺らめきでジャック・オー・ランタンを表現


12月19日~12月25日
クリスマス/緑や赤などクリスマスのイメージカラー

【今後の予定】
金沢工業大学と鹿島建設は今後も、「KIT×KAJIMA 3D Printing Lab」を中心に本技術の研究開発を進め、早期の社会実装に向け取り組むことで、社会課題の解決に貢献してまいります。

(※1)CO₂-SUICOM®
CO₂-SUICOMは、製造過程において大量のCO₂を強制的に吸収・固定化させることにより、コンクリート製造におけるトータルのCO₂排出量をゼロ以下にできるコンクリートです。

3Dプリンティング×CO₂吸収コンクリート 環境負荷低減に貢献する建設物の製造実験を開始(2023.7.12)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202307/pdf/12c1-j.pdf

(※2)「"自由な価値観"を表現する4PLA GALLERY」
https://4pla-sapporo.com/art-gallery/

(※3)【3Dプリンティング × CO₂で固まるコンクリート でベンチを製作 】
環境負荷低減と地域にゆかりのある意匠を実現して金沢市内の公園に設置(2024.3.26)
https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2024/0326_3d-bench.html

(※4)自社保養所「KX-FOREST KARUIZAWA」でサーキュラーエコノミーを実現~社有林材を資源循環 & CO₂吸収コンクリートで橋を構築~(2025.1.28)
https://www.kajima.co.jp/news/press/202501/28a1-j.htm


(関連ページ)
【鹿島との技術開発の一環で】
セメント系3Dプリンターとカーボンニュートラルなコンクリートで製造されたベンチが「札幌4丁目プレイス」に設置されます(2025.4.17)
https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2025/0417_3D_Printing.html

【革新的技術と伝統的イメージが融合された魅力が評価】
産学連携で研究開発し、設置した「友禅流しのベンチ」が 第47回金沢都市美文化賞を受賞(2025.2.21)
https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2025/0219_Yuzen-Nagashi-3D-benchi.html



▼本件に関する問い合わせ先
金沢工業大学 広報課
住所:石川県野々市市扇が丘7-1
TEL:076-246-4784
FAX:076-248-7318
メール:koho@kanazawa-it.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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この企業の情報

組織名
金沢工業大学
ホームページ
https://www.kanazawa-it.ac.jp/
代表者
大澤 敏
上場
非上場
所在地
〒921-8501 石川県野々市市扇が丘7-1

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