~特殊な装置を使わず高精度な空間プロテオミクスを実現~
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科学講座の岡林佑典助教は、同講座の横尾隆教授の指導のもと、同大学の学外研究員としてハンブルク・エッペンドルフ大学医療センター 第三内科(III. Department of Medicine)に在籍し、Victor Puelles教授に師事しながら、多国籍の国際共同研究チームと連携し、1枚の組織切片上から120種類以上のタンパク質を高解像度に可視化し、空間的に統合解析できる世界初の技術「PathoPlex(Pathology-oriented multiplexing)」を開発しました。
PathoPlexは高解像度のマルチプレックスイメージングと、オープンソースソフトウェアによる高度な情報解析を組み合わせた手法であり、1枚の組織切片上から120種類以上のタンパク質を可視化・解析することができます。これにより病気のごく初期の変化や薬剤の影響を細胞・分子レベルで空間的に捉えることが可能です。特別な専用装置を必要とせず、市販の抗体と一般的な蛍光顕微鏡で導入できるため、さまざまな研究施設で幅広く利用が期待されます。さらに、これまで保管されてきた病理標本(FFPE標本)にも適用でき、過去の検体を使った新たな病態解析や診断研究の展開にもつながる柔軟性の高い手法です。
研究成果は、2025年7月18日発行の国際学術誌『Nature』に掲載されました。
【ポイント】
- 従来の免疫染色では、1枚の組織切片から検出できるタンパク質は通常3~4種類が限界だったところ、PathoPlex では120種類以上のタンパク質を可視化できる
- 新たに開発されたオープンソースソフトウェア「spatiomic」による高度な解析により、タンパク質の配置や発現パターンの変化を高解像度で空間的に捉えることができ、病気のごく初期の変化や薬の効果判定に活用可能
- 専用の高価な装置が必要なく一般的な顕微鏡と市販の抗体で利用が可能なため、多くの研究施設や病院で導入が容易
- 長期保存されていた病理標本(FFPE)にも対応、過去の検体から新たな病態解析や診断研究が可能に