東洋製罐グループホールディングス株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:中村琢司)は、辻調理師専門学校(本部:大阪市、理事長:辻芳樹)と日本ジビエ振興協会(本部:長野県、代表理事:藤木徳彦)と共同で、レトルトでジビエの可能性を引き出す「+GIBIERプロジェクト(プラスジビエプロジェクト)」を始動しました。本取り組みは、2021年に辻調理師専門学校と共同で発足し、2024年9月に発表した、食を通じた社会課題解決を目指す「+Recipeプロジェクト(プラスレシピプロジェクト)」※1の中で、ジビエに特化して展開するものです。そして本日、約3年間の研究開発を経て誕生した 「長野のジビエ三種缶」を、クラウドファンディングを通じて販売開始しました。食材を常温で長期保存可能とするレトルト技術を応用し、野生鳥獣の利活用という社会課題の解決を目指し、プロジェクトを推進していきます。
■プロジェクト発足の背景
近年、野生鳥獣による農作物被害は日本における重要課題の1つとなっています。農林水産省のデータ※2によると、令和5年度の野生鳥獣による全国の農作物被害は164億円(対前年度+8.0億円)、被害面積は4万1千ha(同+7千ha)、被害量は51万t(同+4万t)と増加傾向にあります。特に昨今ではクマによる人的被害なども増加し、対応を迫られています。
こうした被害の増加を背景に、野生鳥獣の捕獲量も年々増加傾向にあります。被害防止のための補助金、自動捕獲装置等によるスマート捕獲普及事業、自治体主導の対策強化や「鳥獣被害対策優良活動表彰」など、公的な対応や報道での注目が高まっていることも要因として挙げられます。一方で、捕獲後の利活用については年々増えてはいるものの、未だに約9割が廃棄処分されているのが実態です。
こうした状況を受け、2021年に辻調理師専門学校と共同で発足した「+Recipeプロジェクト」における第2弾の取り組みとして、レトルト技術でジビエの利活用を推進すべく、日本ジビエ振興協会と共に「+GIBIERプロジェクト」を立ち上げ、ジビエの新しい価値を提供できる社会システムを作り上げることを目標に活動を開始しました。
※1 「東洋製罐グループと辻調理師専門学校が食を通じた社会課題解決を目指す「+Recipeプロジェクト」を発表
-プロジェクト第1弾は“長期保存できる本格料理”-」(2024年9月24日付プレスリリース)
https://www.tskg-hd.com/news/detail/20240924_newsrelease.html
※2 農林水産省「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和5年度)」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/index.html
■ジビエ利活用における3つの課題
ジビエの利活用には、大きく3つ課題が存在します。1つ目が「安全性」です。野生鳥獣は菌やウイルス、寄生虫などさまざまな病原体を保有している可能性があります。そのため、衛生面の整った認証施設において正しく処理し、調理の際も適切に加熱する必要があります。
2つ目の課題は「流通と保管」です。もともと、食肉用ではなく、農作物の鳥獣被害対策として捕獲されるため、安定的な需給計画を立てることが難しいという問題があります。また、個体差も大きい上、保管には冷凍設備も必要とされるため、レストラン等でメニューとして加えることが困難なことが、ジビエ利用のハードルとなっています。
3つ目の課題は「手間」です。前述のとおり、適切な処理や加熱によってしっかりと殺菌を行う必要性があるため、ジビエ調理には専門的な知見を有することが推奨されています。また、スネ肉や首肉などの部位は、肉を柔らかくするために長時間煮込む必要があるなど、提供側の労力がかかることも利活用の妨げとなっています。
■レトルトという課題解決手法
加圧加熱殺菌を用いたレトルト技術を応用することで、菌やウイルスを死滅させてジビエを安全に食べられるようにするだけでなく、常温で長期保存可能にします。これは、捕獲のタイミングが不安定なジビエ肉の需給を安定させることにも寄与します。また、加熱済みのため開封してすぐに食べられるほか、調理の際は最後に焼き目を入れる、混ぜるといった仕上げだけで調理が完了します。飲食店などでの取り扱いが容易になることも利点です。多くの課題を抱えるジビエにとって、レトルトは非常に相性の良い技術であると考えています。
|
現状の課題 |
レトルトの特徴 |
メリット |
| 安全性 |
野生鳥獣の保有する菌やウイルス |
加圧加熱殺菌 |
殺菌されるため、子供や高齢者が食べるときも安心 |
| 流通・保管 |
まとまった供給量の確保
冷凍設備が必要 |
常温長期保存 |
廃棄コストや保管コストが下がり、処理施設の収益改善 |
| 手間 |
適切な加熱技術
下ごしらえの労力 |
即食性 |
レストランにおける調理時間の短縮と、食品ロスの削減 |
■「長野のジビエ三種缶」について
12月1日(月)14時より、応援購入サービス「Makuake」にて販売を開始しました。
・Makuake販売ページ:
https://www.makuake.com/project/jibiecan/
■今後に向けて
調理の技術も包装容器の技術も、食べ物をより安全においしく食べられるように発展してきた技術です。昨今の鳥獣被害の先にある、ジビエの利活用は、捨てられているから食べようという日本の“モッタイナイ精神”にとどまらず、高タンパク低カロリーな食料資源として栄養の観点からも重要です。今後は、製品開発にとどまらず、ジビエの安全性や流通、手間といった課題の解決に向けて、レトルト技術を活かした新たな仕組みを構築すべく、三者での共創を進めてまいります。
東洋製罐グループのオープンイノベーションプロジェクト「OPEN UP! PROJECT」
東洋製罐グループは、創業以来 100 年にわたり培ってきた容器の技術やノウハウを活用することで、一人ひとりが抱える社会課題を解決し、持続可能な未来の暮らしを創るオープンイノベーションプロジェクト 「OPEN UP!PROJECT」を2019年に開始しました。東洋製罐グループは、今後もさまざまな社会課題解決に挑んでいきます。
「OPEN UP! PROJECT」Web サイト:
https://jp.open-up.tskg-hd.com/
【別添】
12月1日(月)14時より販売開始しました「長野のジビエ三種缶」の商品情報は、以下よりご確認ください。
https://www.tskg-hd.com/news/news_file/file/20251201_newsrelease.pdf
東洋製罐グループについて
東洋製罐グループは、金属・プラスチック・紙・ガラス等、それぞれの素材が持つ特性を活かしたさまざまな容器をグローバルに提供する総合包装容器メーカーです。包装容器事業のほか、エンジニアリング・充填・物流事業、鋼板関連事業、機能材料関連事業、不動産関連事業の5つの事業を有しています。
当社グループは、社会や地球環境について長期的な視点で考え、すべてのステークホルダーの皆さまに提供する価値が最大化するよう、2050年を見据えた「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」を2021年5月に策定しました。当社グループの目指す姿・ありたい姿を「世界中のあらゆる人びとを安心・安全・豊かさでつつむ『くらしのプラットフォーム』」と位置づけ、「多様性が受け入れられ、一人ひとりがより自分らしく生活できる社会の実現」「地球環境に負荷を与えずに、人々の幸せなくらしがずっと未来へ受け継がれる社会の実現」を目指し、事業活動を推進していきます。
1917年に創立し、国内44社(東洋製罐グループホールディングス含む)、海外50社のグループ会社を擁し、約19,000人の従業員が働いています。2025年3月期の連結売上高は9,225億円です。
https://www.tskg-hd.com/