フィリピンのマニラにて、11月13日から開催されたASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議、及び14日に開催された東アジアサミット(ASEAN加盟国10カ国に加え、米国、中国、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、インド、韓国、日本の計18カ国で構成)は14 日をもってすべての日程を終えましたが、少数民族ロヒンギャ問題の解決へ向けた声明は出されませんでした。同じアジアで起きている史上最悪ともされる人道危機に、国際社会が傍観あるいは解決策を探る手立てさえ起こさない現状に対し、世界の医療団は強い遺憾の意を表明します。
「ASEANはミャンマーのラカイン州で起きている非道な事態を非難する公式声明を9月末に発表しています。今回もアジア地域としての強い姿勢を表明するものと期待していました。しかしながら、今回の首脳会議がその絶好の機会であったにもかかわらず、国連がまさに民族浄化であるとするミャンマーで被害を受けている少数民族ロヒンギャが置かれた状況についての言及は一切ありませんでした」
世界の医療団日本の理事長ガエル・オスタンは憤ります。
内政に干渉しないという原則から加盟国ミャンマーへの圧力を避けたとはいえ、地域的な広がりを持つこの緊急事態の解決に向け、ASEANは決定的な役割を持っているはずです。
「私たちは危機的な状況に直面しています。人道支援に携わる者として、私たちはこの沈黙を受け入れることはできません。国境を越えバングラデシュへ逃げている何十万人ものロヒンギャの人々、そしてミャンマーに残っているロヒンギャの人々が受けた言葉にならない恐怖を前に、世界はこれ以上、傍観者であり続けてはなりません」世界の医療団フランスの理事長であり、医師のフランソワーズ・シヴィニヨンも発言しています。
世界の医療団はバングラデシュの現地パートナーとともにロヒンギャへの医療支援を行っており、規模の大きさ、暴力性、そして事態の複雑さにおいて比類の無いこの危機に対する国際社会の支援が不足していることをこれまでにも再三訴えてきました。多くの人が命を落とし、既に85 万を超える人々が地獄から逃げ出し、また多くがそれに続こうとしている中、制裁は皆無です。
ロヒンギャに国籍はそもそもありませんでしたが、今では住む土地もなく、名前もなく、避難する場所もなく、経験した悲惨な暴力についてさえも認知されていません。
「私たちは、地域の主要な当事者であるASEAN諸国が、この危機の解決に向け強く介入し、ロヒンギャに寄り添い、保護し、基本的人権を保障する具体的な措置を待っていました。この重い沈黙によって、ASEAN諸国だけでなく国際社会全体は、この許しがたい事態が矮小化することに加担しているのです。今、最も由々しき人道的危機の一つであるこの問題に対して、何も行動を起こさないことは選択肢になりえません」ガエル・オスタンとフランソワーズ・シヴィニヨンは訴えます。