成蹊大学理工学部/大学院理工学研究科の三浦正志教授(JST創発的研究支援事業・創発研究者、米国ロスアラモス国立研究所・長期客員研究員)の研究成果が英国科学誌Nature系の専門誌「NPG Asia Materials」に掲載されました。
■ポイント
○新しい材料設計指針により銅酸化物高温超伝導YBa2Cu3Oy薄膜線材を創製し、液体ヘリウム沸点温度(−269℃)下で世界最高の超伝導臨界電流密度150 MA/cm2を達成。
○本研究で創製したYBa2Cu3Oy薄膜線材は、18テスラの高磁場下においてもすべての超伝導材料の中でも最も高い超伝導臨界電流密度を達成。
○磁場下で高い超伝導臨界電流が必要な核融合発電、高度医療診断装置、高度分析機器やリニアモーターカーなどの更なる高性能化・低コスト化・コンパクト化が期待される。
■研究概要
成蹊大学大学院理工学研究科の三浦正志教授(JST創発的研究支援事業・創発研究者、米国ロスアラモス国立研究所・長期客員研究員)は、共同研究者らと共に、新材料設計指針である磁束ピン止め点制御とキャリア密度制御の融合によりYBa2Cu3Oy超伝導薄膜線材を創製し、すべての超伝導材料の中で最も高い世界最高の超伝導臨界電流密度(Jc)を達成しました。
冷やすことで超伝導材料は、電気抵抗ゼロで大電流を流すことが可能です。そのため、他の材料では不可能な強力な電磁石を作ることができるため、核磁気共鳴(NMR)装置、磁気共鳴断層撮影(MRI)装置、核融合発電や超伝導電力貯蔵装置に応用され社会に貢献しています。さらなる高性能化・低コスト化・コンパクト化には、磁場下での高いJcが必要です。これまでの研究よりJc向上には、超伝導体内に侵入する量子化磁束の運動を抑制する磁束ピン止め点(非超伝導)の導入が有効であることが知られていました。また、キャリア密度が高いほど多くの超伝導体のJcが高くなる傾向がありました。しかし、従来の超伝導作製方法では、磁束ピン止め点導入による超伝導相の結晶性低下やひずみによるキャリア密度低下が問題となり、Jcは頭打ちとなっていました。
本研究では、独自の薄膜作製法を用いて高キャリア密度を有するBaHfO3ナノ粒子導入YBa2Cu3Oy超伝導薄膜線材を創製し、磁束ピン止め点制御とキャリア密度制御の融合に成功しました。この結果、液体ヘリウム温度下で世界最高のJc=150 MA/cm2を達成しました。また、18テスラの高磁場下においても、すべての超伝導材料の中で最も高いJcを得ることに成功しました。
今回の研究成果により、液体ヘリウム(−269℃)を冷媒とした大型ハドロン衝突型加速器、核融合発電、核磁気共鳴装置、磁気共鳴断層撮影装置やリニアモーターカーなどの高性能化・低コスト化・コンパクト化に貢献することが期待されます。また、これまで応用が難しいとされてきた液体窒素(−196℃)を冷媒とする超伝導送電、超伝導電力貯蔵装置、航空機用超伝導モータ、発電機などへの応用が期待されます。
本研究成果は、英国科学誌Nature系の専門誌「NPG Asia Materials」(オンライン: 2022年10月21日)に掲載されました。
■英国科学誌Nature系の専門誌「NPG Asia Materials」ウェブサイト
'' Thermodynamic approach for enhancing superconducting critical current performance ''
DOI:10.1038/s41427-022-00432-1
https://www.nature.com/articles/s41427-022-00432-1
●三浦正志教授の研究室ウェブサイト
http://www.sd.seikei.ac.jp/lab/per/index.html
●科学技術振興機構(JST)プレスリリースウェブサイト
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20221024-2/index.html
▼本件に関する問い合わせ先
成蹊学園企画室広報グループ
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/