財務諸表監査において、2023年1月から本格導入を開始
デロイト トーマツ グループの有限責任監査法人トーマツ(東京都千代田区、包括代表 大久保孝一、以下トーマツ)は、財務諸表監査において、複数のリスクシナリオに対応した複数のリスクスコアを統合するアルゴリズムを組み合わせることで、取引単位でリスクシナリオに即した異常性を判定する複合的異常検知モデルを今般開発し、2022年9月に特許を取得し、2023年1月から本格導入を開始します。(特許番号:第7143545号)
これまで、監査人はリスク評価及び対応手続を行う際、監査先のビジネスモデルなどを踏まえて作成したリスクシナリオを基に、複数のリスク評価指標を作成した上で、主に評価指標ごとにそれぞれ異常値を識別し、それらを逐次的に評価することで、監査で重点的に対応するトランザクションを選別していました。
今回開発した複合的異常検知モデルでは、評価指標ごとに識別された値を複合的に組み合わせて異常値を算出することが出来ます。これにより監査人は従来のリスク評価手続を効率的に行うことができるとともに、従来は識別が困難であったた複数のリスクシナリオの組み合わせによる異常性の識別が可能となります。複合的異常検知モデルで検知された異常なトランザクションに基づいて監査人がリスク対応手続をより深化させることが期待されます。
トーマツでは、複合的異常検知モデルを一部活用した監査に着手しており、既に製造業や建設業、専門商社など複数社の上場会社の監査において、リスク評価手続に本モデルを活用しています。また、従前から活用している不正検知モデル、仕訳分析モデル及び異常検知モデル(2017年8月特許取得済)を用いたリスク評価手続に加えて、本モデルを活用することで、AI・アナリティクスを活用するアプローチを更に高度化していきます。
図1:複合的異常検知モデルによる監査手続の高度化のイメージ
今回開発した複合的異常検知モデルでは、リスクシナリオを基にしたリスク評価指標をスコア化する際に、正解を与えずに学習させる教師なしの機械学習手法を用いることで、従来監査人が経験から異常と判断していた部分を統計的な手法で再現する工夫を行っています。また、各リスクシナリオに対応するスコアを1つのスコアに統合していく際、単純なスコア加算とせずに、それぞれのスコアの分布を加味してスコアを統合するアルゴリズムを構築することで、複合的な観点で異常度を測定することに成功しました。更に、結果について、どの評価指標が統合されたスコアにどの程度影響しているのか、スコアの算定に使用した実数値まで詳細に確認することができるため、AIが算出したスコアがなぜ高いのかについても説明することが可能です。
図2:複合的異常検知モデルによるスコアリング結果のイメージ
トーマツでは、デジタル化、標準化、集中化、高度なデータ活用の観点から監査プロセスを変革し、高品質で高付加価値な監査を創造する「Audit Innovation®」
*を推進しています。これまでの価値観や方法論にとらわれることなく、変化するステークホルダーの期待を適時的確に捉え、それらに応え続けていきます。
* Audit Innovationは、有限責任監査法人トーマツの登録商標です。