駒澤大学(東京都世田谷区/学長:各務洋子)禅文化歴史博物館は6月26日(月)から7月30日(日)まで、道元禅師真筆『正法眼蔵嗣書』草案本のレプリカ作製を目的としたクラウドファンディングの第2期(目標額:250万円)を実施する。この取り組みは、開校140周年・開館20周年事業として2箇年度にわたり実施しているもの。『正法眼蔵嗣書』の清書本にあたる修訂本は同館が所蔵しているが、下書きにあたる草案本は江戸時代に26葉に切断・分施され、現在所在が判明しているのは11箇寺の13葉。両者を比較することは道元禅師の思想を知る上で重要であり、草案本の文化的価値は非常に高い。2022年度に行った第1期クラウドファンディングでは、関西・西日本に所在する6箇寺7点のレプリカが完成。今年度は北陸・東日本に所在する5箇寺6点のレプリカを作製し、完結を目指す。なお、禅文化歴史博物館では7月28日(金)まで、第1期のクラウドファンディングの成果として「『正法眼蔵嗣書』の成立~草案本と修訂本~」展を開催している。
禅文化歴史博物館は2007年、日本曹洞宗開祖道元禅師真筆の一つとされる『正法眼蔵嗣書』の修訂本を所蔵することとなった。以来、資料の現状保存に努めるとともに、毎年2週間ほど展示室で一般公開を行っている。
同館が所蔵する『正法眼蔵嗣書』修訂本は清書本にあたるもので、それ以前に下書きにあたる草案本が存在したことが知られている。この草案本は、江戸時代になり26葉に切断・分施されたことが、広島県三原市香積寺に残る『正法眼蔵嗣書』草案本の副本に記録されている。26葉に分かれた草案本断簡のうち、現在所在が明らかなものは11箇寺13葉のみである。
草案本と修訂本を比較することで、現在の最終的な形に至るまでの経緯がわかるようになるため、道元禅師の思想をうかがい知る上で草案本の文化的価値は非常に高い。そのため同館では、かねてより全国に散在する草案本のレプリカを作製し、修訂本とともに一堂に展示したいと考えていた。
2022年、駒澤大学が開校140周年、禅文化歴史博物館が開館20周年を迎えたことを機会に、周年事業としてレプリカ作製の実施とクラウドファンディングに挑戦することを決定。2箇年度にわたって計画、実施している。
『正法眼蔵嗣書』修訂本に加えて草案本レプリカが同館に所蔵されることは、人々の興味・関心を惹起するとともに、新たな研究の地平を切り拓く契機ともなる。また、同プロジェクトの広がりが、所在不明となっている残りの草案本断簡の再発見など、さらなる成果へと繋がっていくことが期待される。
2022年度(第1期)のクラウドファンディングでは目標金額を上回る支援を得て、無事に関西・西日本に所在する6箇寺7点の草案本及び香積寺副本のレプリカが完成し、展示することが叶った(7月28日(金)まで禅文化歴史博物館で展示中)。このたび実施する第2期では、北陸・東日本に所在する5箇寺6点のレプリカを作製し、完結を目指す。
◆クラウドファンディング
「800年の時を超えて迫る!『正法眼蔵嗣書』修訂本の源流」(第2期)
https://readyfor.jp/projects/zenpaku2023
・目標額:250万円
・期 間:6月26日(月)~7月30日(日)
【プロジェクト進行の概要】
13葉の草案本断簡を集めレプリカを作製するには、所蔵先から作製現場までの運搬に時間と経費がかかること、作製作業にかなりの人手を要することから、同プロジェクトは令和4・5年度の2箇年度にわたって進める計画となっている。
1年目の令和4年度に関西・西日本に所在する6箇寺7点の草案本のレプリカ作製を完了しており、2年目となる令和5年度に北陸・東日本に所在する5箇寺6点の作製を進める。
■草案本の所在地
【西日本】※レプリカ作製済
・青龍寺切(滋賀県大津市)
・神応寺切(京都府八幡市)
・禅定寺切(京都府宇治田原町)
・興聖寺切(京都府宇治市)2点所蔵
・陽松庵切(大阪府池田市)
・香積寺切(広島県三原市)
【東日本】
・瑞雲院切(山形県新庄市)
・円通寺切(茨城県水戸市)
・大乗寺切(石川県金沢市)
・永光寺切(石川県羽咋市)
・永平寺切(福井県吉田郡永平寺町)2点所蔵
・長田切(神奈川県長田氏、個人蔵/現在所在不明)
※出典:『永平正法眼蔵蒐書大成 別巻 道元禅師真蹟関係資料集』(大修館書店、1980年)等による
■第1期分作製の成果
・カラーの高精細画像とそれを元に出力したレプリカが初めて得られたが、筆致(墨の濃淡)や紙質が鮮明に確認できた。道元禅師がどのような思いや方法で執筆したのか解き明かす材料が得られた。
・香積寺副本(草案本の複写)は和綴じ本だが、今回綴じを外して撮影したところ、ノドの部分(綴じていると見えない部分)に朱書きの記号のようなものが見つかった。
●開校140周年記念特別展示「『正法眼蔵嗣書』の成立~草案本と修訂本~」
【会 期】2023年1月16日(月)~7月28日(金) 10:00~16:30(最終入館16:15)
【休 館】土(第3土曜日を除く)・日・祝・その他大学の休業日に準ずる
【会 場】駒澤大学禅文化歴史博物館 (東京都世田谷区駒沢1-23-1)
【URL】
https://www.komazawa-u.ac.jp/facilities/museum/overview/zen-no-sekai/140202311620237.html
■駒澤大学開校140周年・禅文化歴史博物館開館20周年
駒澤大学の淵源は文禄元(1592)年、江戸・水道橋の袂に所在した曹洞宗寺院・吉祥寺に設けられた、僧侶を育成するための学問所「学林」とされている。現在の駒澤大学の前身となるのは、明治15(1882)年10月15日に麻布区北日ヶ窪に開校した「曹洞宗大学林専門本校」である。禅文化歴史博物館は、平成14(2002)年に駒澤大学開校120周年事業として開館。令和4(2022)年に開館20周年を迎えた。
https://www.komazawa-u.ac.jp/facilities/museum/
(関連記事)
・駒澤大学禅文化歴史博物館が道元禅師直筆『正法眼蔵嗣書』草案本のレプリカ作製のためクラウドファンディングを実施 -- 分断された26葉のうち所在がわかる13葉が対象(2022.05.09)
https://www.u-presscenter.jp/article/post-48110.html
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