農学や生命科学などを幅広く展開する東京農業大学。その世田谷キャンパスに隣接して、2019年4月に開校した東京農業大学稲花小学校では、1学期も終わりに近づいた7月11日(火)、ノーベル平和賞受賞者であるバングラデシュの経済学者ムハマド・ユヌス博士を招いて、特別授業を実施しました。
ユヌス博士は、貧しい人々を対象に、起業や就労のための融資をすることで、貧困から抜け出すサポートをする「グラミン銀行」の創設者です。農大稲花小の1期生である5年生の児童71名に向け、これからの世界のために、貧困ゼロ・失業ゼロ・CO₂排出ゼロの「3つのゼロ社会」を作ることの大切さについて語っていただきました。話は全て英語ですが、1年生からほぼ毎日英語を勉強してきた子どもたちは、通訳の方のサポートも受けつつ、博士の力強い声に聞き入りました。
博士の話に続いて、子どもたちは様々な質問を投げかけます。事前に調べ学習を重ね、英語で準備したメモを手に、次々と博士のとなりに座りました。「返せなくても罰を与えないのに、本当に貸したお金は返してもらえるのでしょうか?」「幸せって、お金があるから幸せなのかな? お金がなくても幸せになることもあるのではありませんか?」。授業で習った英語の枠を超え、自分たちで調べて作った英文で懸命に質問すると、博士はやさしく答えてくれます。たくさんの経験を基にした、説得力のある回答を、子どもたちは集中して聞きながら、また頭のなかで考えを巡らせました。
博士は、「あなたたちは一人一人が創造力をもって価値を提供できる、ユニークな人間です。一人として同じ人はいません。あなたたちにとって、とても大切なものはアイデアです。アイデアは大きなパワーをもっています。アイデアで、世界をより良いものに変えていってください」と、メッセージを送り、特別授業は幕を閉じました。
子どもたちからは、「チャンスをつかむためには、日々疑問や興味を持ち、チャレンジしていくことが大切だと思いました」「アイデアが出せるように、色々な事に興味を持って、知識を増やしていきたいです」「お話を聞いて、とても心を動かされました。一生の思い出になること間違いなしです」といった、小学5年生らしい、そしてまた、今回を機に少し成長したことを感じさせる、たくさんの感想が寄せられました。
取材:学校法人東京農業大学初等中等教育部
写真提供:特定非営利活動法人アース・アイデンティティー・プロジェクツ