流通経済大学と筑波大学などの研究チームは、軽運動を10分間行うことで記憶力が即時的に向上することを健常高齢者において初めて明らかにしました。また、運動時に瞳孔径を計測した結果から記憶力向上のメカニズムとして脳内の覚醒機構が関与する可能性を新たに示しました。
加齢による「もの忘れ」の原因の一つに脳の広範囲の神経活動を調節する覚醒機構の低下が考えられています。運動には、記憶力を含む認知機能の維持向上効果があり、認知症予防策としても注目されていますが、どんな運動をどれくらい行えば効果があるのか、どのような脳内メカニズムで効果が発揮されるのかはよくわかっていません。本研究では、ゆっくりとしたペースのウォーキング程度の軽い運動が記憶力を高めるか、そのメカニズムとして脳内覚醒機構による調節が関与するかを健常な高齢者を対象に検証しました。
実験に参加したのは、66~81歳の健常な高齢者21名で、自転車漕ぎ運動を息が軽く弾む程度の低強度で10分間行うと、運動せずに座っていた場合に比べて記憶力が向上することがわかりました。また、運動時に瞳孔が拡大することが観察され、これが記憶力向上を予測する指標となるだけでなく、記憶力向上のメカニズムとして脳内覚醒機構が関与する可能性が示されました。
今後は、低強度運動の長期的な効果を検討するとともに、記憶力向上に効果的な、運動習慣がなくても親しみやすい軽運動プログラムの開発が期待されます。
※研究の詳細は、添付PDFをご覧ください。
◆研究について掲載された米科学誌「Neurobiology of Aging」
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0197458023002269
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