東京農業大学の教職・学術情報課程 武田 晃治 教授は12月8日(金)、世田谷キャンパス サイエンスポート8階「エアブリッジ」にて、ミニシンポジウム「ザリガニの資源活用:東京農大持続可能な農業研究プロジェクト」を開催しました。
今回のシンポジウムのテーマは、次の2つです。
- 東京農業大学と共同研究パートナーのジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)、キスメオ・オーガニクス社とともにザリガニの食用資源化に関する基礎研究からケニア共和国での社会実装への取り組みを発表
- 和風・ケニア風のザリガニ料理の提案と意見交換
|
最初に武田教授から、食用資源としてザリガニを捉えるべき研究成果について発表がありました。
【写真:武田 晃治 教授 東京農業大学 教職・学術情報課程】
日本国内で6月、「条件付き特定外来生物」に指定された北米原産の身近な淡水甲殻類、「アメリカザリガニ」。
武田教授は「実は国外では水産養殖生物としてとてもメジャーな存在で、数兆円という規模の市場を持つ有用な資源となっています。可食部の尾の部分は高タンパク・低脂肪であるばかりか、糖や核酸、有用成分に係わる化合物が含まれ食品として美味しい。さらに繁殖力も強く生産性が高い生物」だと話しました。
資料:国外におけるアメリカザリガニの資源利用のされ方
|
資料:国際的な淡水生物の養殖量で13番目
|
また、東京農業大学の共同研究パートナー、ジョモ・ケニヤッタ農工大学(JKUAT)のマシュー博士がオンラインから参加し、ケニア共和国内で見込める、資源としてのザリガニの可能性を発表。キスメオ・オーガニクス社のロビン社長は会場で、これまでのザリガニ養殖の取り組みの成果や展望を発表しました。
シンポジウム後半の試食会では東京都・港区の日本料理教室「近茶流宗家」の柳原 尚之先生による「ザリガニ炊き込みご飯」や「ザリガニのかき揚げ」、「ザリガニの胡麻和え」等の和風ザリガニ料理が参加者に振舞われました。今回、「アメリカザリガニ」特有の甘味やうま味成分を活かすため、“茹でる”のではなく“蒸す“、和食としての創作料理を提供いただきました。
和食に合うのは、日本酒。岩手を代表する日本酒メーカー「南部美人」の久慈 浩介 代表取締役社長から、東京農大と共同開発した「純米吟醸 プリンセスミチコ」等の日本酒の提供もありました。
【写真:純米吟醸 プリンセスミチコ】
試食会では他にも、キスメオ・オーガニスクス社のロビン社長からタコスやマッシュポテト等のケニア風料理を、一般社団法人地域創成人財育成学舎の関 正貴 代表理事が「ザリガニビスクスープ」や「塩茹でザリガニ」、「ザリガニ煎餅」を参加者に提供しました。
【写真:ケニア風料理のマッシュポテト】 |
【写真:ロビン社長】 |
参加者は80名近くの学内外の関係者。ザリガニを食用資源として活用するにあたり、可能性と課題を共有する場となりました。
武田教授は「今回、東京農業大学がアフリカ大陸での食糧問題解決の一つの方法として、アメリカザリガニの資源活用に取り組んでいることを社会にPRできたと考えています。今後、東京農大の研究成果をケニアの大学や養殖会社と共有し、環境に配慮した形でアメリカザリガニを持続可能な資源として活用していくことで食糧問題解決につながるよう、これからも研究を頑張ります。」と語りました。
【写真:左から、株式会社 南部美人 五代目蔵元 久慈 浩介 代表取締役社長(東京農業大学客員教授) / 近茶流宗家 柳原 尚之 CEO&Executive Chef / 博士(醸造学) / 東京農業大学 教職・学術情報課程 教授 武田 晃治 /Kisumeo Organics Ndungu Robin社長】
進行する気候変動や人口増加が引き起こすかもしれない食糧難。新たな未利用資源活用の必要性が高まっています。