国内最大規模の診療データベースを保有し、データに基づく医療を推進するメディカル・データ・ビジョン株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:岩崎博之)は、流行しているマイコプラズマ肺炎に関するデータを抽出しました。データの調査対象期間は2019年8月から2024年7月。施設数はその期間でデータの揃っている148。その中で、マイコプラズマ感染症、マイコプラズマ気管支炎、マイコプラズマ肺炎発症患者の月別推移、年齢別の比較などをしました。
マイコプラズマ肺炎とは、「Mycoplasma pneumoniae肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによっておこる呼吸器感染症。小児や若年層における肺炎の原因として比較的多いものの一つです。患者として報告されるもののうち約8割は14歳以下ですが、成人の報告もあります。同疾患は一年を通じて発生しますが、秋冬に増加する傾向があります。
■月別患者数の推移
=グラフ1=
2019年9月~11月には、寒い季節にウイルス性疾患が流行するのにあわせて、マイコプラズマ肺炎の患者数が増えています。しかし、2020年以降は、突出している月はなく横ばい状態でした。
また、2020年以降、新型コロナウイルス感染症への感染対策が徹底された時期には同疾患の発生率が下がっています。ところが、2024年には例年より患者数が増えています。
■年齢別
=グラフ2=
2019年8月~2020年7月は「0~19歳」の小児・若年層が半数以上を占めていましたが、2020年度から2022年度はコロナ禍で小児・若年層が減ったために、割合として高齢者の感染が大きくなっていると考えられます。
そして2023年8月~2024年7月は、再び小児・若年層の感染の割合が大きくなっています。
■現場医師のコメント
社会医療法人慈生会等潤病院 谷口泰之副院長(呼吸器内科)
マイコプラズマ肺炎は感染症法上で5類感染症に分類され、毎週全国の流行状況が把握されている。2024年第23週(6月3日~9日)あたりから急激に増加している。
コロナ禍ではマスク着用、手洗いなどの習慣が定着していたため、感染者数は低水準だったが、ここにきて一気に拡大のペースが速まっている。今後、インフルエンザ、新型コロナにマイコプラズマ肺炎が加わり、新たな医療現場への負担となる可能性はある。
発熱、倦怠感、頭痛、咽頭痛などの症状から始まり、数日後に咳が出てくる。咳は下熱後も長期(3~4週間)にわたり続くのが特徴である。感染した人の咳やくしゃみからの飛沫感染が主体で、患者と濃厚に接する家庭内、職場などの集団でしばしば拡がる。
重症感がなくても咳がひどい場合は、医療機関を早めに受診することをお勧めする。胸部エックス線検査で肺炎像が確認され、酸素飽和度が低下し、抗生物質に加えてステロイド治療を要するケースなどでは入院も必要になる。