ウナギ仔魚用のオリジナル飼料を産学連携で開発 鶏卵黄を含まない飼料で完全養殖のニホンウナギ稚魚の生産に成功

近畿大学

近畿大学水産研究所(和歌山県白浜町)と三栄源エフ・エフ・アイ(大阪府豊中市)はニホンウナギ(以下:ウナギ)の仔魚用飼料の共同開発において、令和7年(2025年)5月末までに、鶏卵黄を含まないオリジナル飼料(特許出願中)を用いて、100尾以上のシラスウナギ(稚魚)を生産することに成功しました。 【本件のポイント】 ●近畿大学水産研究所と三栄源エフ・エフ・アイが共同開発した鶏卵黄を含まないオリジナル飼料を使用して、完全養殖のニホンウナギの稚魚生産に成功 ●食品添加物の一つである増粘剤の使用により、仔魚の成長ステージにあわせて飼料の粘度が調整可能に ●鶏卵黄や魚粉などの動物由来原料から植物性などサスティナブルな原料への代替をめざす 【本件の背景】 ウナギは日本の食文化に欠くことのできない食材ですが、国内消費量の99%以上を養殖に依存しています。現在、ウナギ養殖に用いる種苗はすべて、天然のシラスウナギが用いられていますが、近年、漁獲されるシラスウナギの量が減少傾向にあるため、ウナギ養殖に必要な種苗の確保が課題となっており、一日も早い「完全養殖」の実用化が望まれています。 ウナギの完全養殖をめざす研究は古くから行われ、北海道大学が昭和48年(1973年)に人工ふ化に成功しましたが、仔魚の飼育に適した飼料の開発が難しく、その後20年以上にわたってふ化した仔魚を成長させることができませんでした。仔魚用飼料については、平成14年(2002年)に国立研究開発法人水産研究・教育機構(以下:水産機構、当時:独立行政法人水産総合研究センター)が、サメ卵やオキアミを主な原料とする濃厚懸濁液状※(スラリー状)飼料により初めてシラスウナギまでの飼育に成功。その後、平成29年(2017年)には原料の品質安定性や持続的な供給性の観点から、鶏卵黄、乳タンパク質および酵素処理魚粉を主原料とするスラリー状飼料が開発され(水産機構:特許第6952978号)、今日まで広く使用されてきました。しかし、依然としてシラスウナギまでの生残率は低く、天然に比べて成長も遅い傾向があり、より良い飼料の開発が望まれていました。 従来の飼料の主原料の一つである鶏卵黄は人の食料としても重要ですが、近年、鳥インフルエンザの流行などにより供給が不安定になりがちであり、価格高騰が続いています。また、給餌の際に重要となる飼料の物性(粘度)は水分の添加量によって調節されているため、栄養素の選択や飼料中の濃度を調節することが難しく、新たな飼料開発の制限要因となっていました。 ※液体の中に固体が大量に、あるいは高濃度で分散し、ドロドロとした状態。 【本件の内容】 ウナギ仔魚の飼育に使用する飼料は、一定量のタンパク質と脂質を含み、これらの成分が水中でも分離したり溶出したりせず、スラリー状を保持することが不可欠です。このような状態を維持するために、サメ卵や鶏卵黄は重要な役割を果たしていました。しかし、サメ卵は品質が不安定であることと持続的な供給性に問題があることから鶏卵黄に置き換わり、その原料である鶏卵は供給が不安定になりがちで価格高騰が続いていることから、これらの動物性原料を含まない飼料の開発に取り組みました。 その結果、鶏卵黄、乳タンパク質や酵素処理魚粉などからなる従来飼料から鶏卵黄を除き、増粘剤の利用によって仔魚の成長ステージに応じた粘度に調整可能なオリジナル飼料の開発に成功しました。この飼料を用いて、ウナギ仔魚を長期飼育したところ、令和6年(2024年)5月に、シラスウナギの獲得に成功しました。 さらに、改良したオリジナル飼料を用いた最新の飼育試験では、149日齢からシラスウナギへの変態を開始する仔魚が現れ、282日齢時点では従来の鶏卵黄使用飼料よりも多くのシラスウナギが得られています。 【今後の研究と課題】 ウナギの完全養殖は、受精卵を得てシラスウナギにするまでの仔魚期の飼育が一番難しいとされており、その期間の飼料が生残率、成長速度、シラスウナギへ変態するまでに要する日数を大きく左右します。一般的なウナギ養殖に利用可能なシラスウナギを得るまでに、長い期間と多大な労力や光熱費を要することが人工種苗生産の高コスト化の要因となり、実用化ができていません。 今後は、近畿大学水産研究所がこれまでに培ってきた人工種苗生産技術と三栄源エフ・エフ・アイの飼料物性制御技術の融合によって、より安定して高い生残率でウナギ仔魚の飼育を可能とするとともに、シラスウナギへの変態をより短期間で実現する飼料の開発をめざします。 【近畿大学におけるウナギ研究の経過】 昭和51年(1976年)ウナギの種苗生産研究を開始 昭和59年(1984年)採卵・ふ化に成功するも餌を食べるまでに至らず 平成10年(1998年)採卵・ふ化に成功するも餌を食べるまでに至らず、その後研究を中断 平成31年(2019年)3月 研究再開 令和元年(2019年)9月12日 人工ふ化に成功 令和3年 (2021年)4月 三栄源エフ・エフ・アイとウナギ仔魚用飼料の共同研究を開始 令和5年 (2023年)7月6日 完全養殖に成功 令和6年 (2024年)5月 三栄源エフ・エフ・アイと共同開発したオリジナル飼料によるシラスウナギの生産に成功 【三栄源エフ・エフ・アイ株式会社】 所在地   :大阪府豊中市三和町1-1-11 代表者   :代表取締役社長 清水康弘 事業内容  :食品・食品添加物・食品原料・工業製品の製造及び販売 創業    :明治44年(1911年) 資本金   :18億円 ホームページ:https://www.saneigenffi.co.jp 【関連リンク】 近畿大学水産研究所 https://www.kindaifish.com/ ▼本件に関する問い合わせ先 広報室 住所:〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1 TEL:06‐4307‐3007 FAX:06‐6727‐5288 メール:koho@kindai.ac.jp 【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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