やられたらやり返すか?逃げるが勝ちか?生き残る戦略をゲーム理論で解明
https://doi.org/10.1103/PhysRevE.100.032304
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立正大学経営学部の山本仁志教授を中心とする研究グループは、囚人のジレンマと呼ばれる競争環境の中で協力関係を実現しつつ生き残る戦略に関して最新の研究成果をまとめて発表した。今回の研究は創価大学経営学部の岡田勇准教授、芝浦工業大学の武藤正義准教授、芝浦工業大学大学院生の田口拓哉氏との協働により進められたもので、その成果は2019年9月11日に米国物理学会発刊の国際学術誌Physical Review Eに掲載された。
相互に協力することが期待されるが、非協力を選ぶ個人の方が常に得をするため相互協力の実現が難しい状況は社会的ジレンマと呼ばれる。社会的ジレンマは多くの社会問題の基礎的なメカニズムを有しており、いかにして競争的な環境で協力的な社会が実現可能かを探ることは現代社会において極めて重要になりつつある。
今回、研究グループは「囚人のジレンマ」と呼ばれる社会的ジレンマの基礎的なモデルに、そもそもゲームに参加しないという新たな行動を導入した際にどのような戦略が生き残り協力社会を実現するのかを分析した。これまでの研究では単純な戦略の組合せしか分析できていなかったが、研究チームはエージェントシミュレーションを採用し、更に複雑なシミュレーション結果の可視化手法を開発することで約2万の戦略が共存する環境で適応的な戦略を分析することに成功した。
その結果、将棋のように交互に手を出す逐次手番ゲームにおいては「裏切られたら逃げ、相手が逃げたら協力する」という戦略が支配的になり協力社会が実現することがわかった。一方でジャンケンのように同時に手を出す同時手番ゲームでは「搾取したり搾取されたりした時には裏切り、そうでない時には協力に転ずる」という戦略が支配的になることがわかった。いずれの戦略もお互いに協力しあっている時には協力し続けるため基本的に協力社会を維持することができるが、協力関係が壊れたときに関係を修復する過程に大きな違いが見られる。
今回の研究を率いてきた山本教授によると、逃げるという行動が可能であれば「やり返す」という行動を使わなくても協力社会を維持できることが示されたことは協力の進化に関する研究を押し広げる可能性がある、としている。
論文情報
Yamamoto, H., Okada, I., Taguchi, T., & Muto, M. (2019). Effect of
voluntary participation on an alternating and a simultaneous prisoner's
dilemma. Physical Review E, 100(3), 032304.