世界最高レベルの高輝度18kWファイバレーザを開発
~高出力と高密度を両立し、金属の厚板加工や高速加工のニーズにさらに大きく貢献~
古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区丸の内2丁目2番3号、代表取締役社長:小林敬一)は国産で最大出力となる18kWのマルチモードファイバレーザ(図1)を実現しました。これまでの一般的なレーザと比較して非常に高いエネルギー密度を持つファイバレーザは、これまでも切断・溶接といった製造工程の品質や生産性に大きな改善を生んでおり、今回の出力向上により材料加工分野におけるさらなる技術革新をもたらします。
2021年度に製品化を予定するとともに、今後は30kWの大出力ファイバレーザの開発も進めていきます。
図1.18kWファイバレーザ外観
図2.一般的なファイバレーザとの特性比較
■背景
■内容
高エネルギー密度の実現
これまで市場で入手可能な10kWを超えるレーザは、ビーム品質(注1)を表すBPPが4.0mm・mrad程度であったのに対し、今回当社が開発した18kWレーザはBPPが3.0mm・mradと25%良好な値となっており、75%以上高いエネルギー密度を実現しています(図2)。また、高出力ファイバレーザにおいて課題となる誘導ラマン散乱(SRS)(注2)や発熱については、新たな技術開発により解決しました(図3)。
多様な加工用途
ビーム品質が優れた18kWレーザにより微小集光スポット径を実現し、従来にない厚さの厚板溶接や厚板切断が可能となります。また、薄板加工への適用においても当社従来レーザと比較して1.5倍を超える加工速度が得られ、お客様の製造コスト削減に貢献します。さらには良好なビーム品質を維持していることから、これまでの古河電工製レーザと同様にビームプロファイル制御技術と組み合わせることが可能であり、自動車や船舶に限らず、様々な加工分野で、ものづくり競争力を支える強力なツールとなり、お客様に新しい選択肢としてご提供できるものと確信しています。
2021年度には、18kWファイバレーザの製品化を予定しており、アプリケーションラボ(図4)での加工試験環境のご提供を開始いたします。また、今回の18kWの構成部品を用いて、30kWまでの出力増強が可能であり、今後さらなる大出力ファイバレーザの実現に挑戦していきます。
■18kWファイバレーザの光出力と発振スペクトルの観測結果(図3)
■展示会出展情報
会期:2020年12月2日(水)~4日(金)
会場:幕張メッセ
ブース:No. 5-52
■用語解説
(注2)SRS:誘導ラマン散乱(Stimulated Raman Scattering)の略で、光ファイバに高出力のレーザ光を導通するとラマン効果により発生する散乱光です。大きなSRSが発生すると光出力が不安定となるなどの阻害要因となります。
■古河電工グループのSDGsへの取り組み
当社グループは、「世紀を超えて培ってきた素材力を核として、絶え間ない技術革新により、真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献します。」を基本理念に掲げて、4つのコア技術(メタル・ポリマー・フォトニクス・高周波)を軸に、事業活動をしています。さらに、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、当社グループの事業領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定し、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。