山岸 博 京都産業大学名誉教授らのグループは、アブラナ科作物の育種に最も広く使われている、ダイコンのオグラ型細胞質雄性不稔遺伝子(ミトコンドリアのorf138)に対する核の稔性回復遺伝子(Rfo)の働きを世界で初めて明らかにした。研究成果は「Molecular Genetics and Genomics」に掲載された。
山岸名誉教授らの研究グループは、日本で市販されているダイコンの一部に、稔性回復遺伝子(Rfo)があるにも関わらず雄性不稔のままの品種があることを発見した。そこで、この品種を交雑して得た子孫の系統について、orf138のタイプや花粉ができるかどうかなど一連の観察を行なった。その結果、普通はorf138の発現をおさえることができるRfoが、Type Hのorf138に対してだけは効果がないことを発見した。
orf138のmRNAとRfoからつくられるORF687タンパク質の結合の強さを調べると、ORF687は、Type Aのorf138のmRNAとはコード領域の中の17個のヌクレオチドと強く結合するのに対し、Type Hとの結合力は著しく低下していた(図3)。さらに、この結合力の差は、Type AとType Hの間のたった1個の塩基の違い(図2)が原因で生じていることがわかった。
これらの結果から、ORF687タンパク質は、orf138から転写されたmRNAのコード領域に強く結合することによって、それ以降の翻訳の進行を妨げる働きがあることが明らかになった。
また、この研究では、orf138のmRNAのコード領域を途中で切断することによって花粉稔性を回復する、新しい稔性回復遺伝子(Rfs)の存在も明らかになった。
今回の発見は、細胞質雄性不稔に対する稔性回復遺伝子の働きを分子レベルで明らかにしたという意義を持つだけでなく、植物の進化における核とミトコンドリアの遺伝子の相互作用を理解する良いモデルとなる。
むすんで、うみだす。 上賀茂・神山 京都産業大学
<関連リンク>
・山岸 博 名誉教授らのグループが、ダイコンの細胞質雄性不稔に対する稔性回復遺伝子の機能を解明
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2021_ls/20210611_400a_ronbun.html
・京都産業大学 研究ニュース一覧
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/kenkyu_2021_01.html
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