大阪工業大学(学長:井上晋)工学部応用化学科の藤井秀司教授、化学・環境・生命工学専攻博士前期課程1年の熱田雄也大学院生、慶應義塾大学(塾長:伊藤公平)理工学部応用化学科の緒明佑哉教授の共同研究グループが、分散安定剤(乳化剤)を使用せずに、クリーンな表面を有する導電性高分子ナノ粒子の環境に優しい新規合成法を開発しました。
【本件のポイント】
● 分散安定剤(乳化剤)を使用しない導電性高分子ナノ粒子の合成手法を開発
● 環境にやさしい水媒体を使用
● 導電性塗料、黒色顔料、医用ラテックス製品への利用が期待
導電性高分子の一つであるポリピロール(PPy)は、電気・光学特性、生体適合性等に優れるため、電子デバイス、センサーなどさまざまな用途が開発されています。しかしPPyは、溶剤に溶解せず、かつ熱をかけても柔らかくならないため加工性が低いという問題点を有しています。そこで、分散安定剤(乳化剤)存在下において、酸化剤を用いたピロール(Py)の重合を液中で行い、PPyをナノ粒子の液体分散体として合成する研究が活発に行われてきました。流動性を示すPPyナノ粒子液体分散体は加工性に優れる一方で、粒子表面に分散安定剤が不純物として残存し、除去が困難であるという問題がありました。本研究では、水媒体の存在下でPyと酸化剤が接触しない装置内で重合反応を行い、分散安定剤を用いずに水中にて、PPyナノ粒子の合成に成功しました。本研究で合成したPPyナノ粒子は、PPy自身が有する電荷による静電反発によって安定化しており、クリーンな表面を有する点が魅力的です。また、環境にやさしい水媒体中での合成が可能である点も魅力的です。今回開発した手法により合成されるPPyナノ粒子は、分散安定剤を含まないため、導電性高分子自身の性質を効率的に引き出すことが可能であり、導電性塗料、電磁波吸収塗料、黒色顔料、医用ラテックス製品としての応用が期待できます。
この成果は日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)の支援を受けて得られたもので、米国化学会の学術雑誌Langmuirに論文が掲載(2023年10月13日付)されています。
URL:
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.langmuir.3c01859
(DOI: 10.1021/acs.langmuir.3c01859)
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【リリース発信元】 大学プレスセンター
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