「超低遅延ネットワークキャンパスの実験を開始」
図1. 慶應義塾大学未来光ネットワークオープン研究センターにおける
空孔コアファイバケーブル網のイメージ
空孔コアファイバケーブル網のイメージ
本センターは、最先端の光のメトロ/アクセス技術を研究する拠点として2023年4月に総務省の支援のもと開所し、自動車運転やリアルハプティクス(感覚通信)といった最先端のアプリケーションを備えています。このたび敷設された空孔コアファイバは古河電工グループのOFS研究所が、世界で初めて実用化の大きな課題であった従来の光ファイバとの互換性の問題を解決し、かつ実用に近いレベルでケーブル化したものです。これにより本センターの超低遅延ネットワークキャンパスでの通信速度は従来の約1.5倍となり、世界で初めて実用に近い環境で、世界中の研究者達が空孔コアファイバを用いたこれらのアプリケーション実験も行えるネットワークを構築しました。慶應義塾大学は、この超低遅延ネットワークを使い、複数のコンピュータリソースをタイトに結合したリソースプール実験、さらには、Local5Gと組み合わせたネットワークコントロール型自動運転、感覚通信であるリアルハプティックス等の超低遅延性の応用実験を、また、古河電工は、本センターにおいて経時安定性や環境安定性なども含めて実際に敷設された空孔コアファイバケーブルの特性を評価し、同ケーブルの実用化を推進する予定です。慶應義塾公式YouTubeチャンネルにて関係者インタビューを公開しています(補足2)。
本取り組みを通じ、社会・経済活動を支える情報通信インフラの持続的な維持・発展に貢献してまいります。
[空孔コアファイバについて]
空孔コアファイバは、従来のガラスコア光ファイバとは異なる光閉じ込め原理により、ガラスよりも屈折率の低い空孔のコアに光を閉じ込めて伝搬する新しいタイプの光ファイバです(図2)。従来のガラスコア光ファイバと比較して30%以上の低遅延化と1.5倍の通信速度(信号伝送速度の限界である光速と同程度)を実現し(図3、補足3・4・5)、Beyond5G時代に本格化する自動運転や遠隔ロボット(遠隔手術)、金融などの高速取引といったサービスの実現において極めて重要な超低遅延性を有しています。
加えて、超多波長(伝送できる波長数を大幅に増やす)により通信チャネル数を10倍以上に増やすことが可能で、エネルギー密度および線形性(ハイパワー入力時の波形の歪みを抑える能力)は従来のガラスコアファイバと比較して1,000倍に向上することから、IoTへの電力供給を光ファイバで行うなど、適用範囲の大幅な拡大を実現します。また映像配信や携帯電話基地局等において、アナログ信号を直接光ファイバで送っても波形のゆがみがないことを利用し、電子回路を大幅に簡素化することで省電力化も期待できます。
図2. 従来の光ファイバと空孔コアファイバの断面図
図3. 空孔コアファイバによる遅延特性の改善度
[補足情報]
1.総務省委託研究概要
名称:グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発 課題Ⅱ 大容量・高多重光アクセス網伝送技術
共同研究者:沖電気工業株式会社、東北大学、近畿大学、慶應義塾大学、エピフォトニクス株式会社、古河電気工業株式会社
実施期間:2022年5月20日~2026年3月31日(予定)
2.関係者インタビュー「世界初!空孔コアファイバで繋がる未来光ネットワークオープン研究センター」
https://youtu.be/0kTzwlIJ87o
3.古河電工時報 第140号:空孔コアファイバケーブル
https://www.furukawa.co.jp/rd/review/fj140/fj140_09.pdf
4.OFC 2020 paper:空孔コアファイバケーブル
B. Zhu et al., “First Demonstration of Hollow-Core-Fiber Cable for Low Latency Data Transmission”, OFC 2020, PDP Th4B.3.
5.OFS社製空孔コアファイバ(英語のみ)
https://www2.ofsoptics.com/accucore-hcf
■お問い合わせ先
慶應義塾
広報室 望月
E-mail: m-pr@adst.keio.ac.jp
古河電気工業株式会社
広報部 村越
お問い合わせフォーム: https://www.furukawa.co.jp/srm/form/index.php?id=news