投資家の94%が企業のサステナビリティ報告書に根拠のない主張が含まれていると回答 PwCグローバル投資家意識調査2023
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投資家の94%が企業のサステナビリティ報告書に根拠のない主張が
含まれていると回答
PwCグローバル投資家意識調査2023
- 投資家の4 分の3が投資判断においてサステナビリティが重要であると回答し、半数以上(57%)がサステナビリティ報告書についてより一層の明瞭さと一貫性の必要性を要請
- 投資家の61%はAIの迅速な導入は「とても重要」または「極めて重要」であると回答
- 気候変動問題に対する懸念が22%から32%に上昇し、サイバーリスクへの懸念と肩を並べた一方、マクロ経済動向やインフレへの懸念は2022年のピークから低下
※2023年11月15日付けのPwC発表資料(https://www.pwc.com/gx/en/news-room/press-releases/2023/pwc-2023-global-investor-survey.html)の翻訳です。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
PwCの「グローバル投資家意識調査2023」によると、投資家10人中9人以上(94%)が、企業のサステナビリティ報告書には根拠のない主張が含まれていると回答しています。
PwCでは、多岐にわたる国や地域、資産クラス、投資アプローチをカバーする345名の投資家やアナリストを対象に、投資対象の企業に最も影響を与える要因について調査を実施しました。本調査は、2021年から3年連続で実施しています。
本調査では、マクロ経済やインフレへの懸念が投資家にとって依然として最大の関心事であるものの、2022年のピーク時よりは重要度が低下したことが明らかになりました。また、投資判断の材料として、特に気候変動問題のリスクへの懸念が大幅に上昇しており、サイバーリスクと並んで32%となっています。
一方、本調査はテクノロジーの変革がもたらす投資環境の構造変化も浮き彫りにしています。投資家の59%が、今後3年にわたり、企業が価値を生み出す方法に影響を与える可能性が最も高い要因として、テクノロジーの変化を挙げています。具体的には、投資家の61%がAIの迅速な導入が「とても重要」または「極めて重要」であると回答しています。
サステナビリティも、引き続き投資家にとって極めて重要な要因となっています。2022年の調査結果からは4ポイント減少したものの、75%の投資家は、企業がサステナビリティ関連のリスクや機会にどのように対応しているかが投資判断の重要な要因であると回答しています。
PwC英国 グローバル・アシュアランス・リーダーのJames Chalmersは次のように述べています。
「私たちは、これまでの気候変動やテクノロジーに関する変化の重要性についての認識を高める段階から、投資家が、具体的で厳しい質問を投げかける段階に移行しつつあります。投資家は、企業が各社の戦略においてこれらの問題にどのように取り組んでいるか、また、企業が関連するリスクや機会をどのように分析し、そのなかで真に重要なものが何かをどのように特定しているかについて、知りたがっています。このような背景を踏まえ、企業報告書は、投資家およびその他のステークホルダーにとって、信頼でき、一貫性があり、比較可能な情報を提供できるよう、進化し続ける必要があります。」
グリーンウォッシングの懸念が存在するなかで、投資家は報告基準の強化を期待
今回の調査では、投資家が、サステナビリティ報告書や利用する情報の信頼性について根強い疑念を抱いていること、よく言われる「グリーンウォッシュ」の懸念を感じていることを浮き彫りにしました。投資家の94%は、サステナビリティ報告書には根拠のない主張が一定程度含まれていると回答しており(2022年の調査結果の87%から増加)、そのうち15%は根拠のない主張が「極めて大量に含まれている」と考えています。根拠のない主張が、中程度あるいは大量に含まれていると回答した投資家の割合は、昨年より1ポイント増加し79%でした。
グリーンウォッシングに対するこうした認識は、投資家が規制当局や基準設定機関に対して、企業報告における明確さと一貫性を担保するための基準の設定を期待していることの表れと言えるでしょう。投資家の57%は、企業が今後導入される規制や基準(CSRD、SECが提案した米国の気候情報開示規則、ISSB基準など)に適合している場合、これらへの準拠が投資の意思決定のために必要な情報を満たす、という考え方に「中程度」、「大いに」または「極めて」同意すると回答しました。さらに、85%が、合理的な保証(財務諸表の監査と同程度)があると、サステナビリティ報告書を信頼する上で、「中程度」、「大きな」、または「極めて大きな」影響があると回答しています。
ESGへのコミットメントの達成にかかるコストへの投資家の注目も高まっています。投資家の76%はコストに関する情報を「重要」、または「とても重要」と位置づけています。社会や環境に対する企業の影響に関する情報を必要としている投資家のうち、企業が社会や環境に与える影響について金額で開示すべきであるとの考えに同意する投資家は、2022年の66%から75%に増加しています。
リスクがあることを認識しつつも、投資家は AI 導入の加速を支持
今回の調査では、投資家はリスク管理の重要性を認識しつつも、人工知能(AI)導入を加速することは、価値創造にとって極めて重要であると捉えていることが明らかになりました。投資家の61%は、AIのより迅速な導入は「とても重要」または「極めて重要」であると回答しています。「中程度に重要」との回答も合わせるとその数値は85%まで跳ね上がります。投資家は、今後3年間に企業が価値創造に取り組む上で、最も影響を与える要因として、技術変化(59%)を挙げています。さらに投資家は、企業価値の評価において、イノベーション、および新たに台頭しつつある技術(AI、メタバース、ブロックチェーンなど)が、重視する項目のトップ5に入ると考えています。その一方で、リスクの観点からは、投資家の86%が、データセキュリティやプライバシーについて、AIが「ある程度」から「非常に大きな」リスクがあると、相当程度のリスクがあることも認識しています。その他のリスク要因としては、不十分なガバナンスと内部統制(84%)、誤った情報(83%)、偏見と差別(72%)が続きます。
PwCドイツ グローバル・レポーティング・リーダーのNadja Picardは次のように述べています。
「私たちは、企業による、気候変動に関する一貫性のある報告については大きな進展が見られるものの、まだ改善の余地があります。投資家は一貫して企業に対してより一層のエンゲージメントを求めています。特に、新しいテクノロジーがビジネスの変革や投資のあり方を大きく変えていく中で、投資家は企業が、生成AIなどの新しい技術を中心に、機会およびリスクをどのように管理していくのか、より一層の情報提供を求めています。」
本調査は、2023年9月に、PwCが世界30の国と地域の345名の投資家およびアナリストを対象に行いました。また、そのほかに15回の詳細なインタビューを実施しました。回答者の多くは機関投資家で、主にポートフォリオマネージャー(19%)、アナリスト(18%)、最高投資責任者(17%)で構成され、回答者の48%はこの業界で10年以上の経験を有しています。回答者らの投資は、多岐にわたる資産クラス、投資アプローチ、および投資の時間軸にまたがっており、運用資産(AUM)は5億ドルから1兆ドル以上までさまざまです。回答者の65%は運用資産が10億ドル以上の機関に所属しています。
※数値は、小数点以下を四捨五入して表示しています。
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