省エネ建築物の新築・改修に取り組むメリットを総合評価する12の指標を共同開発
「健康増進」「知的生産性向上」など、省エネ建築物の副次・間接・相乗的効果(NEBs)を定量化
デロイト トーマツ グループのデロイト トーマツ コンサルティング合同会社(代表執行役社長:佐瀬真人、以下「デロイト トーマツ」)と株式会社NTTファシリティーズ(代表取締役社長:松原和彦、以下「NTTファシリティーズ」)は共同で、省エネ建築物の新築・改修による効果を総合的に定量評価する指標を開発しました。環境性能に優れた建物は、オフィス環境の向上による従業員の健康増進・知的生産性の向上など、多くの副次・間接・相乗的な効果が見込めます。本指標を用いることにより、エネルギー削減効果のみならず、こうした副次的な効果を含めた省エネ建築物導入の経営判断が可能となります。両社は本指標の普及により、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)等の省エネ建築物の新築・改修の投資判断を支援することで、企業や自治体の保有資産の脱炭素化に貢献していきます。取り組みの背景・目的
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、建築物の消費エネルギーの削減が喫緊の課題となるなか、エネルギー消費を実質的にゼロにするZEBをはじめとした省エネ建築物の普及が求められています。
環境性能に優れた建物は、オフィス環境の向上による従業員の健康増進・知的生産性の向上や、さらにはエンゲージメント向上に伴う離職率の低下など、多くの副次・間接・相乗的な効果が見込めます。一方で、こうした環境性能に優れた建物の費用対効果は、CO2削減量やエネルギー削減量で評価されることが多く、その効果は限定的であるため、結果として省エネ建築物導入の意思決定がなかなか進まないという現状がありました。
こうした背景から、ZEBプランナーとして長年ZEBの設計・監理を手掛けてきたNTTファシリティーズと、カーボンニュートラルの包括支援の経験やオフィスビルで働く従業員のウェルビーイングに関する知見が豊富なデロイト トーマツは、その知見を活かして2023年4月より省エネ建築物のエネルギー・光熱費削減以外の効果の定量評価手法の開発に取り組んでいます。エネルギー・光熱費削減以外の効果は、Non-Energy Benefits(NEBs [ネブズ])と呼称される効果であり、本取り組みでは後述の「健康増進」「知的生産性向上」等のNEBs の評価指標を示しました。
本評価指標を用いることにより、省エネ建築物の新築・改修における効果を総合的に金額換算にて評価することが可能となり、投資対効果を適切に評価できるようになります。延床面積1,200m2・常勤人数30名程度のオフィスビルの場合、投資回収年数は20年から4年になることが試算されました。
NEBs評価指標の定義
そのうち現時点で評価に必要なデータが得られた8指標については、定量評価するための算出式を作成・検証しました。評価指標の算出式は、各評価指標がどのような財務的影響をもたらすかを省エネ建築物の新築・改修の施策と紐づけたロジックモデルを構築して整理し、基本的なビルのスペックや運用状況といった既存のデータでの算出が可能な形で作成しました。また、残りの4指標においても随時算出式を策定していく予定です。
NEBs評価指標の考え方
例えば、項番2「知的生産性」の場合、省エネ化施策により断熱性が向上することで快適な温熱環境が実現され、従業員の知的生産性の向上が期待されます。
評価指標は、社内データ(施設設備に関する情報、従業員に関する情報等)及び社員へのアンケートから得られた情報、施設設備の利用状況の確認や従業員へのヒアリング実施により、NEBsの数値を実態に合うように精緻化を行うことも可能です。
今後の展望について
今後デロイト トーマツとNTTファシリティーズは、NTTファシリティーズが設計を手掛ける建築物を含め、より多くの建物においてNEBsの定量評価を行うことで知見を蓄積し、省エネ建築物におけるエネルギー・光熱費削減効果と環境負荷低減以外の価値であるNEBsをより精緻に定量評価することをめざします。この取り組みを通じて、ZEBをはじめとする省エネ建築物の採用促進を通じたカーボンニュートラルの貢献はもちろん、従業員のウェルビーイングの向上や、Scope3のCO2排出量削減にも貢献することをめざし、幅広いステークホルダーと連携し、地域社会全体での脱炭素化を推進していきます。
NEBs評価指標の詳細な定量化の方法及び結果検証については以下のホワイトペーパーにて公開しております。
https://www.ntt-f.co.jp/profile/whitepaper/001/