世界初、5MW以上の大型ガスエンジンにおける水素100%燃焼技術を開発
川崎重工は、発電出力5MW以上の大型ガスエンジンにおいて、水素のみを燃料として二酸化炭素を発生せずに安定した燃焼を実現できる技術を開発しました。本技術は、世界初※1となります。
水素を燃料とするレシプロエンジンでは、水素の燃焼特性の制約から、出力を下げるか、水素を天然ガスと混焼させる方法が一般的です。この度の開発では、発電用として豊富な納入実績がある電気着火式カワサキグリーンガスエンジンの単気筒試験機※2において本技術を適用することで、水素のみを燃料として運転した場合でも、天然ガスを燃料とした場合と同じ出力を維持したまま安定して運転が可能であることを確認しました。今後、2030年頃の商品化を目指し、製品実装への最適化と設計を進めてまいります。
当社は、地球温暖化やエネルギー資源の枯渇などの環境問題に対応すべく、燃焼時に二酸化炭素が発生しない究極のクリーンエネルギーと言われる水素の活用に注力しています。水素は、天然ガスに比べ燃焼速度が速く燃焼温度が高い特性から、異常燃焼が生じる可能性や燃焼室の部品が過熱することによる早期劣化が懸念されていました。当社が開発に取り組んできた「水素燃料に対応したエンジン仕様」と「水素の燃焼特性を調整する技術」※3 を組み合わせることで、異常燃焼や早期劣化を防ぎながら、水素専焼・混焼を問わず、水素と天然ガスの任意の混合比率に応じて燃焼状態を適正に制御することが可能です。
当社は、脱炭素社会に向けた水素エネルギーの普及を見据え、水素サプライチェーン(つくる・はこぶ・ためる・つかう)の技術開発を進めており、中でも、水素ガスエンジンは、日本の二酸化炭素 発生量の約4割を占める発電分野において脱炭素化に大きく貢献する「つかう」分野の重要な製品のひとつです。今後も、現在稼働中の当社製ガスエンジンへの適用など、さらなる水素エネルギー利用の開発を進め、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。
※1 発電出力5MW以上の大型ガスエンジンにおける水素専焼技術は現時点で世界初(本プレスリリース配信時における当社調べ)
※2 単気筒試験機:
カワサキグリーンガスエンジン(18シリンダ仕様であるKG-18シリーズの発電出力:7.8MW)の1シリンダ分に相当する範囲で構成され、1シリンダ分の出力で運転・評価できる様にした、試験用エンジン
※3 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業である「水素社会構築技術開発事業/大規模水素エネルギー利用技術開発/大出力水素燃焼エンジン発電システムに関する技術開発」を通じて得られたA重油/水素の二元燃料エンジンに関する知見の一部をもとに、電気着火式ガスエンジンの仕様にあわせ当社独自で応用・発展させたもの