【東洋大学国際観光学部News Letter 2024 Vol.4】 新しい観光のパラダイム「対面サービスのコミュニケーション、その価値の再構築」
対面サービスの環境とニーズの変化
観光に関わる業界の中でサービス業は重要な産業の一つです。近年、その様相は大きく変化しています。人が有形無形のサービスを対面で提供する従来の形態(これをここでは「対面サービス」と呼ぶことにします)に加え、機械やインターネット関連の機器を介したものやAIを使った遠隔操作でのサービス提供も可能になりました。これらの「機器によるサービス」は効率性や経済性に価値を見出す市場の変化と技術革新がもたらしたものです。さらに労働人口の減少による人手不足問題が顕著になり、先般のコロナ禍で人と人が接するリスクに注目が集まると、企業はその経営資源や経営戦略によって対面サービスから機器によるサービスへの変換を加速するようになりました。
対面サービスの新たな価値と棲み分け
持続可能で価値ある対面サービスのために
対面サービスが「人だからこそのサービス」として真価を発揮するためには、サービス提供者が自己効力感や誇りをもって人との関わりを楽しめるような環境整備が必要です。そのためには、提供者がサービスの手順やマニュアル的接客マナーだけでなく、対面サービスの意義を理解し「感情労働論」や「アサーション論」などを基にしたコミュニケーションスキルを習得する必要があると考えます。また、提供者と受け手の双方がそれぞれ、互いに人として対等な関係にあるという意識を持つことも鍵になります。これらに国や企業が主体となり取り組むことがサービス提供者のストレスを軽減し、日本の「おもてなし」文化を、過剰でなく自然な形で存続させることになるでしょう。
東洋大学国際観光学部 准教授
専門分野:経営管理、組織内コミュニケーション、ホスピタリティ・マネジメント
研究キーワード:アサーティブ・コミュニケーション、感情労働、エアライン・サービス