世界初、小児の腎臓のネフロン数を生体で推算することに成功
- 東京慈恵会医科大学
- 2025年03月04日
- 10:00
【概要】
東京慈恵会医科大学小児科学講座の坂口晴英助教、平野大志講師らの研究グループは、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科、順天堂大学医学部小児科学講座の遠藤周准教授、西﨑直人先任准教授、および東京都立小児総合医療センター血液・腫瘍科の湯坐有希部長と共同で、生体内における小児のネフロン(腎臓の機能単位)数を推算することに世界ではじめて成功しました。
これまで小児のネフロン数は剖検(病理解剖)症例でのみ評価可能でしたが、本研究により生体での推算が実現しました。この研究成果により、小児期からの腎臓病の発症リスク評価や、より適切な治療方針の決定が可能になることが期待されます。
本研究成果は、2025年3月4日付の国際誌「Kidney International Reports」に掲載されました。
【研究の背景】
腎臓の機能単位であるネフロンの数には個体差が存在することが知られています。ネフロンは胎生期に形成され、出生後は新生されないため、出生時点でのネフロン数が生涯の腎機能を規定する重要な因子となります。これまで小児のネフロン数を知るためには剖検による解析が必要でしたが、本研究では、腎腫瘍症例における摘出腎組織の病理学的解析と造影CT画像解析を組み合わせることで、生体におけるネフロン数の推算を試みました。
【研究の成果】
今回の推算を行った対象症例は21名(年齢中央値2.5歳)です。対象者21名の解析を行ったところ、片側腎臓あたりのネフロン数の推算は約925,000個/腎という結果でした。既報の成人におけるネフロン数のデータと比較したところ、ネフロン数と年齢および体格(体表面積)との間に正の相関を確認できました。これは、既報の成人におけるネフロン数(約670,000-710,000個/腎)と比較し有意に高値を示しています。
【今後の応用と展開】
本研究成果により、小児期におけるネフロン数の定量的評価が可能となり、以下の臨床応用が期待されます。
・ 腎疾患発症リスクの層別化
・ 個別化医療の実現に向けた治療戦略の最適化
・ 腎発達に関する新規知見の集積
今後は、様々な腎疾患症例における検討を進め、ネフロン数と腎疾患進行との関連性について更なる研究を展開する予定です。
【研究費】
本研究は JSPS 科研費 JP 19K08355の助成を受けたものです。
【論文情報】
タイトル:Estimating number of nephrons in living pediatric patients using nephrectomy specimens
著者名:Haruhide Sakaguchi, Daishi Hirano, Yuhei Kawakami, Ai Tokunaga, Naoto Nishizaki, Amane Endo, Hiroki Miyano, Yuki Yuza, Saeko Hatanaka, Takaya Sasaki, Go Kanzaki, Nobuo Tsuboi, Kimihiko Oishi
掲載誌:Kidney International Reports
DOI:10.1016/j.ekir.2024.12.027
【研究チーム主要メンバー】
東京慈恵会医科大学 小児科学講座 助教 坂口晴英
東京慈恵会医科大学 小児科学講座 講師 平野大志
東京慈恵会医科大学 小児科学講座 教授 大石公彦
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 助教 神崎剛
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 准教授 坪井伸夫
順天堂大学医学部 小児科学講座 准教授 遠藤周
順天堂大学医学部 小児科学講座(医学部附属浦安病院) 先任准教授 西﨑直人
東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科 部長 湯坐有希
- 本件に関するお問合わせ先
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学校法人慈恵大学 広報課
メール:koho@jikei.ac.jp
電話:03-5400-1280