ビタミンDサプリメントの連日摂取が風邪から気管支肺炎までの急性気道感染症の発症を16%減少させる

国際共同研究による約5万人を対象とした解析で明らかに

東京慈恵会医科大学 分子疫学研究部の浦島充佳教授 および 腎臓・高血圧内科学講座の中島章雄助教 は、3大陸16か国38施設の研究者44名との国際共同研究により、ビタミンDサプリメントを毎日摂取することで、風邪から気管支肺炎までの急性気道感染症の発症リスクが16%低下することを明らかにしました。

ポイント
  • ビタミンDサプリメントを毎日摂取すると、急性気道感染症の発症リスクが16%低下しました。
  • 週1回、月1回に大量内服するやり方では効果はありませんでした。
  • 基礎疾患として喘息がある場合、急性気道感染症の発症が27%減少しました。

この研究はイギリスのロンドン大学・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院、アメリカのハーバード大学医学部・コロンビア大学・ダートマス大学・ペンシルベニア州立大学、カナダのマクマスター大学、スウェーデンのカロリンスカ研究所、スイスのチューリッヒ大学、チリ・カトリック大学などが参加し、約5万人を対象とした43件の二重盲検ランダム化臨床試験(医師も参加者も、どちらを摂取しているか分からない二重盲検試験) の結果を統合、ビタミンDサプリメントとプラセボの効果を比較するメタ解析を実施しました。

本研究の成果は、2025年2月21日付で「The Lancet Diabetes & Endocrinology」誌に原著論文として掲載されました 。
  

東京慈恵会医科大学 分子疫学研究部 教授 浦島充佳 のコメント

私たちが16年前に実施したインフルエンザ予防ランダム化臨床試験が国際共同研究のきっかけ
「なぜインフルエンザAは冬に流行するのか?」
この「問い」に対し、「冬になると免疫力を高めるビタミンDの血中濃度が低下するためではないか?」 という仮説を立てました。その根拠は以下の通りです。
ビタミンDは、主に日光を浴びることにより皮下で生成されます。そのため、冬になると日照時間が短くなり、日光を浴びる機会も減少するため、血中のビタミンD濃度は夏と比較して約半分に低下します。
ビタミンDは、免疫細胞内で活性化され、カテリシジンやディフェンシンといった強力な抗菌ペプチドの産生を促進することで自然免疫を強化します。さらに、獲得免疫にも好影響を与えることが報告されています。
そこで、「冬に低下するビタミンDの血中濃度をサプリメントで補うことで、インフルエンザAの発症を予防できるのではないか?」 と考え、臨床試験を実施しました。

時期:
2008年12月-2009年3月(4カ月間)

対象:
小中学生 334人

試験方法:
二重盲検ランダム化プラセボ比較試験
ビタミンDサプリメント(1,200 IU/日)を摂取する群とプラセボを摂取する群に1:1の割合でランダムに振り分け

結果:
タミンDの摂取により、インフルエンザAの発症リスクが42%低下
ビタミンD群:インフルエンザAの発症者 18人 / 167人(10.8%)
プラセボ群:インフルエンザAの発症者 31人 / 167人(18.6%)

この結果は 2009年に「American Journal of Clinical Nutrition(Am J Clin Nutr)」誌に掲載され、その後、738本の研究論文に引用されるなど、世界の研究者に大きな影響を与えました 。そして、この研究がきっかけとなり、国際共同研究につながりました。
  1. 2017年、連日ビタミンDサプリを内服することで急性気道感染症の発症を2割抑制することをランダム化臨床試験のメタ解析により見出し、イギリス医師会誌(British Medical Journal [BMJ])に報告しました 。
  2. 2017年、ビタミンDサプリを内服することで喘息発作の増悪を防ぐことができることをランダム化臨床試験のメタ解析により見出し、Lancet RMに報告しました 。

前回の類似研究との比較

私たち国際共同研究チームは2021年にも同様のメタ解析を実施しました。ビタミンDサプリメントを連日服用すると22%急性気道感染症が減りました 。さらに週に1回や月に1回大量内服するやり方を含む全体の5万人のデータでも8%の予防効果がありました。一方、今回の研究では全体でみると6%の減少に留まり、P値も0.057で統計学的に有意ではありませんでした。前回と今回のデータの違いはコロナ禍のデータを含むか否かです。新型コロナは冬だけではなく夏も流行します。発症予防にはビタミンDではなく、換気が重要です。そのため、新型コロナに対するランダム化臨床試験を追加したことで、ビタミンDの効果が薄まってしまったのではないかと私個人は考えています。つまりビタミンDサプリメントは全ての急性気道感染症を予防できるのではなく、インフルエンザのようなビタミンD血中濃度が低下する冬に流行する感染症に限定されるのではないかと想定していますが、この点検証が必要です。

ビタミンDは急性気道感染症の予防薬

冬になると、乳幼児や高齢者が肺炎などの急性気道感染症により命を落とすことがあります。ビタミンDサプリメントは 基本的に副作用がなく、日光を浴びるだけなら費用もかかりません。このようなシンプルな方法で、時に致死的な急性気道感染症を予防できるのであれば、非常に意義のあることだと考えています。
本件に関するお問合わせ先
学校法人慈恵大学 広報課 
メール:koho@jikei.ac.jp
電話:03-5400-1280

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組織名
学校法人慈恵大学
ホームページ
https://www.jikei.ac.jp/
代表者
栗原 敏
資本金
0 万円
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非上場
所在地
〒105-8461 東京都港区西新橋3-25-8
連絡先
03-3433-1111

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