このたび、横浜市立大学附属市民総合医療センター(以下、横浜市大センター病院)と公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立市民病院は、重度の呼吸不全や心不全等患者に対して体外式膜型人工肺(ECMO)の治療に関する連携や、専用救急車両「モバイルICUカー(以下、エクモカー)」による医療支援・患者搬送などを目的として、8月7日に治療連携に関する協定を締結しました。
横浜市大センター病院が開発したエクモカーを用いて、高次医療機関からECMO 管理に不慣れな非専門医療機関への医療支援・連携を行うことにより、重症呼吸不全患者の救命の一助となるよう、取組を進めていきます。
1 経緯
横浜市大センター病院では、重症呼吸不全等患者に対する将来的なECMO需要の高まりに備え、昨年度、ECMO装着下で患者搬送を可能とするエクモカーの開発を進めてきました(本年3月完成)。
新型コロナウイルス感染症による重症呼吸不全患者への対症療法として広く認知されたECMOですが、ECMOを所有していない、あるいは技術的・人員的理由から治療可能な医療機関は限定されているのが現状です。
こうした課題を解決するためには、高次医療機関からECMO 管理に不慣れな非専門医療機関への医療支援・連携が望まれています。全国的にも希少なエクモカーを活用し、これら課題解決に取り組んでいくため、本治療連携協定を締結する運びとなりました。
2 連携の概要
(1)ECMO装着の適否の評価
横浜市大センター病院の医師が連携先病院に出向き、対象患者へのECMO装
着の適否を専門的な視点から評価します。
(2)連携病院施設内でのECMO装着
上記においてECMO装着が必要と診断された患者に対し、横浜市大センター
病院の医師が連携先病院施設内でECMOを装着します。
(3)エクモカーを利用した患者搬送
ECMOを装着したまま、エクモカーにて患者を横浜市大センター病院に搬送
します。
(4)集中治療室下での専門治療
患者搬送後、横浜市大センター病院の特定集中治療室等で専門的な治療を患
者に提供します。
3 全国でも希少なエクモカー
ECMOを装着したまま患者を搬送することができるエクモカーは、全国に数台しかありません。
日本集中治療医学会は、今般のコロナ禍において重症患者が増えた場合、これら患者の搬送に支障が生じる恐れがあるとして、全国20か所に1台のエクモカーの配備を国に要望しています。
エクモカーは、一般的な救急車よりも車内スペースが広く設計されており、モバイルICUとしてECMO装着患者等の管理(通常集中治療室における管理)にも対応が可能です。大容量バッテリーを搭載しており、消費電力の大きいECMOを使用しながら長時間の搬送にも安心して対応できる仕様となっています。
4 今後の取組(予定)
今回は、ECMO装着適否の評価から横浜市大センター病院への搬送、治療管理までの一連の治療に関する連携協定を締結しましたが、今後はさらに、
(1)自院においてECMOの装着は可能だが治療管理の継続が困難
(2)転院先を探しているが、その選定に難渋している
などの市内・県内の医療機関に対し、広域的な連携を検討していきます。横浜市大センター病院の使命として、地域医療における「最後の砦」としての役割を果たしていきます。