シエンプレ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:佐々木 寿郎)は、一般社団法人 デジタル・クライシス総合研究所(住所:東京都渋谷区、所長:佐々木 寿郎)と共同で、調査対象期間に発生したネット炎上についての件数と、その内訳、分析結果を公開しました。
○資料ダウンロードページ
https://www.siemple.co.jp/document/enjou_report_202407/
■調査背景
2024年1月31日、デジタル・クライシス総合研究所はソーシャルメディアを中心とした各種媒体とデジタル上のクライシスの特性、傾向と論調を把握するために「デジタル・クライシス白書2024」(調査対象期間:2023年1月1日~2023年12月31日)を公開しました。
継続調査の結果報告として、今回は2024年7月1日~2024年7月31日の調査対象期間に発生した炎上事案について、新たに分析しています。
○「デジタル・クライシス白書2024」は以下のURLから、ダウンロードが可能です。
https://www.siemple.co.jp/document/hakusyo2024/
■調査の概要
調査期間:2024年7月1日~2024年7月31日
調査対象:X(旧Twitter)、Facebook、Yahoo!ニュース、アメーバブログ、FC2ブログ、Yahoo!知恵袋、5ちゃんねるなど、
SNS媒体と炎上拡大の要因になりやすいとデジタル・クライシス総合研究所が判断した媒体への投稿。
調査方法:デジタル・クライシス総合研究所ソーシャルリスニングツールを使用。
「炎上」というキーワードを含む投稿から、下記の基準により「炎上」と判断した事案を抽出(※)。
炎上の原因となった問題行動の主体、問題行動の内容、炎上を起こした企業の業種など、さまざまな切り口から傾向を分析しました。
※デジタル・クライシス総合研究所では「炎上」の定義を、「企業や団体、個人が発言した内容、それらによる行為がSNSやWebメディア上に投稿・掲載・拡散され、それに言及した批判や非難の投稿が100件を超えた場合」としています(投稿数についてはオリジナル投稿のみを計上。コメントのない再投稿は含みません)。
各グラフにおける割合については、全て小数第二位を四捨五入しました。
分析対象投稿数:952件
うち炎上事案数:75件
■調査結果
1. 炎上主体別 発生件数
1-1. 炎上主体別 発生件数と割合(前月比)
7月の炎上事案は75件でした。前月に比べ、22件減少しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」28件(37.3%)、「一般人」14件(18.7%)、「メディア以外の法人」23件(30.7%)、「メディア」10件(13.3%)という結果でした。
割合については下図のとおり、前月と比較し、「著名人」が11.2ポイントの減少、「一般人」が1.2ポイントの増加、「メディア以外の法人」が10.1ポイントの増加、「メディア」が0.1ポイントの減少という結果でした。
1-2. 炎上主体別 発生件数と割合(前年平均比)
前年平均比では、炎上事案は57件減少しています。
炎上主体別の内訳では、「著名人」が15件の減少、「一般人」が30件の減少、「メディア以外の法人」が11件の減少、「メディア」が1件の減少という結果でした。
割合については下図のとおり、前年平均と比較すると、「著名人」が4.7ポイントの増加、「一般人」が14.6ポイントの減少、「メディア以外の法人」が4.9ポイントの増加、「メディア」が5.0ポイントの増加という結果でした。
1-3. 炎上主体別 発生件数と割合(前年同月比)
前年同月比では、炎上事案は45件減少しています。
炎上主体別の内訳は、「著名人」が9件の減少、「一般人」が18件の減少、「メディア以外の法人」が13件の減少、「メディア」が5件の減少という結果でした。
割合については下図のとおり、前年同月と比較し、「著名人」が6.5ポイントの増加、「一般人」が8.0ポイントの減少、「メディア以外の法人」が0.7ポイントの増加、「メディア」が0.8ポイントの増加という結果でした。
2. 炎上の内容別 発生件数
2-1. 炎上の内容別 発生件数と割合(前月比)
炎上内容別の内訳では、「情報漏洩」が0件(0.0%)、「規範に反した行為」が10件(13.3%)、「サービス・商品不備」が5件(6.7%)、「特定の層を不快にさせる行為(※)」が60件(80.0%)という結果でした。
前月と比較すると、「情報漏洩」は8件の減少、「規範に反した行為」は2件の減少、「サービス・商品不備」は4件の増加、「特定の層を不快にさせる行為」は16件の減少という結果でした。
※特定の層を不快にさせる行為:法令や社会規範に反する行為ではないものの、他者を不快にさせる行為(問題行動、問題発言、差別、偏見、SNS運用関連など)。
割合については下図のとおり、「情報漏洩」が8.2ポイントの減少、「規範に反した行為」が0.9ポイントの増加、「サービス・商品不備」が5.7ポイントの増加、「特定の層を不快にさせる行為」が1.6ポイントの増加という結果でした。
2-2. 炎上の内容別 発生件数と割合(前年平均比)
前年の平均発生件数と比較すると、「情報漏洩」が1件減少、 「規範に反した行為」が3件減少、「サービス・商品不備」が12件減少、「特定の層を不快にさせる行為」が41件減少しました。
前年平均の割合と比較すると、「情報漏洩」が0.8ポイントの減少、「規範に反した行為」が3.5ポイントの増加、「サービス・商品不備」 が6.2ポイントの減少、「特定の層を不快にさせる行為」が3.5ポイント増加しました。
2-3. 炎上の内容別 発生件数と割合(前年同月比)
前年同月の件数と比較すると、「情報漏洩」が1件減少、「規範に反した行為」が6件減少、「サービス・商品不備」が19件減少、「特定の層を不快にさせる行為」が19件減少しました。
前年同月の割合と比較すると、「情報漏洩」が0.8ポイント減少、「規範に反した行為」は変動なし 、「サービス・商品不備」が13.3ポイントの減少、「特定の層を不快にさせる行為」が14.2ポイント増加しました。
3. 炎上内容の詳細区分別 発生件数
炎上内容の詳細を分析したところ、「問題発言」に関する炎上事案が21件と最も多く、次いで「非常識な行動(モラルのなさ)」に関する炎上事案が12件でした。
4. 法人等の業界別発生件数
4-1. 法人等の業界別発生件数と割合(炎上の内容別)
炎上主体のうち、「法人等」に該当する炎上33件について、業界ごとに分類しました。炎上事案が最も多かった業界は「メディア」業界で10件(30.3%)という結果でした。
業界別の炎上種別を割合で見た場合、結果は下図のとおりです。
5. 企業規模別の炎上発生件数と割合
炎上の標的が「法人等」の場合について、上場企業か否か、また、それぞれの従業員数について調査しました。
なお「法人等」に該当する炎上事案は、日本国内に所在する企業のみを対象としています。
また、公共団体や政党、企業概要や従業員数等の情報が公開されていない団体、国外に所在する企業等は調査対象から除外しています。
調査対象の総数は21件です。
5-1. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前月比)
上場区分に関して「上場企業」が主体となった事例が4件(19.0%)、「非上場企業」が主体となった事例が17件(81.0%)という結果でした。
前月と比較すると、「上場企業」の件数は2件増加、「非上場企業」の件数は4件減少しました。
割合を比較すると、「上場企業」の割合は10.3ポイント増加しました。
5-2. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年平均比)
前年平均と比較すると、「上場企業」の件数は1件減少、「非上場企業」の件数は6件減少しました。
割合を比較すると「上場企業」の割合は1.1ポイント増加しました。
5-3. 炎上主体における上場企業・非上場企業の件数と割合(前年同月比)
前年同月と比較すると、「上場企業」の件数は1件増加、「非上場企業」の件数は9件減少しました。
割合を比較すると、炎上した企業のうち、「上場企業」の割合は8.7ポイント増加しました。
5-4. 炎上の対象となった従業員数と売上高の散布図
従業員数3,000人未満、売上高3000億円未満の企業規模で炎上事案が多く発生しました。
一方で従業員数約4,000人以上の企業でも炎上事案が発生していることから、どのような従業員数や企業規模でも、炎上は発生する可能性があるといえます。
また下図のグラフにはありませんが、従業員数約1万人、売上高約7000億円といった大企業の炎上事案も確認されました。
■分析コメント
西村あさひ法律事務所 パートナー 沼田 知之 氏
2024年7月の炎上事案は75件と減少傾向にあるものの、「特定の層を不快にさせる行為」が80%を占め、前年同月比で増加しています。また、企業経営者のSNS利用や商品マーケティングに関連する炎上が目立ち、表現の自由と社会的な立場に応じた発信に対する責任のバランスが問われています。法的には、名誉毀損やプライバシー侵害のリスクも懸念されます。企業は、自社のSNSポリシーや多様性に配慮したマーケティング戦略について再確認することが必要であり、これはマネジメント層についても例外ではありません。
今後、9月の防災の日や10月のハロウィンに関連した不適切な表現による炎上リスクにも注意が必要となります。特に、災害の犠牲者や特定の文化への配慮を欠いた投稿は、深刻な批判を招く可能性があります。これらの季節的なイベントに関連する情報発信においても、社会的感受性を持って対応すると共に、炎上発生時の迅速かつ適切な対応策を事前に準備しておくことが求められます。
■(参考)分類基準
1.分類基準(炎上の主体)
抽出したデータは以下の表1に基づき分類しました。
(表1)分類基準(炎上の主体)
個人 |
著名人 |
芸能人、政治家、アスリート、経営者
それ以外の職業の人物については、データ確認日時点でフォロワー(もしくはチャンネル登録者、読者登録者)数が100万人を超えている場合 |
一般人 |
著名人の条件にあたらない個人 |
法人等 |
メディア以外の法人 |
メディア以外の法人、社団法人、公益団体
法人の関係者(役員、従業員など) |
メディア |
テレビ局、新聞社、出版社、ネットメディアなど |
参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、2016
公に情報を発信する機会の多いメディア関連の法人については、炎上に至る経緯に違いがあるため、他業種の法人と分けて集計しています。
2.分類基準(炎上の内容)
抽出したデータは以下の表2に基づき分類しました。
(表2)分類基準(炎上の内容)
分類名 |
詳細 |
情報漏洩 |
機密情報や個人情報など、企業をはじめとする組織の内部に留めておくべき情報や重要なデータが、外部に漏れること |
規範に反した行為 |
法令等、規範に反した行為
暴力・暴言、著作権侵害、ハラスメントなど |
サービス・商品不備 |
サービス・商品の不備による炎上
異物混入、サービス・商品の瑕疵など |
特定の層を不快にさせる行為 |
法令等、規範に反した行為ではないものの、他者を不快にさせる行為
問題行動、問題発言、差別・偏見、軽率なSNS運用など |
参考:山口真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授):
『ネット炎上の研究「炎上の分類・事例と炎上参加者属性」』、 出版記念公開コロキウム用資料、2016
3.分類基準(業界)
また、炎上の主体が「法人等」の場合、20の業界に分類しました。
なお、該当しない業界に関しては「その他」としてデータを処理しました。
金融 |
サービス |
食品 |
政治 |
IT |
建設・不動産 |
生活関連 |
芸能 |
メディア |
物流・運送 |
衣料・装飾 |
教育 |
自動車・機械 |
エネルギー・資源 |
飲食 |
医療 |
小売・卸 |
電機・精密 |
娯楽・レジャー |
宗教団体 |
参考:業界動向サーチ「ジャンル別業界一覧」
https://gyokai-search.com/2nd-genre.htm
■一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所 概要
研究所名 :一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所
設立 :2023年1月20日
代表理事 :佐々木 寿郎
アドバイザー:山口 真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授)
沼田 知之(西村あさひ法律事務所所属弁護士)
設立日 :2023年1月20日
公式HP :
https://dcri-digitalcrisis.com/
関連会社 :シエンプレ株式会社