北海道の建築物で初めて省エネのみで「Nearly ZEB」を達成
本リリースのポイント
- 北海道における社会課題解決を加速させるため、北海道に新社屋を建設。2024年10月2日、起工式を実施。
- 新社屋は、北海道初、省エネのみで「Nearly ZEB(一次エネルギー消費量75%以上削減)」を達成。
- 冬季の暖房使用を重視した積雪寒冷地オフィスの省エネモデルとして汎用性のある技術を採用。
- ZEB達成のための具体策は以下の通り。
- インナーテラス(緩衝帯+自然換気)を活用した冷暖房負荷の低減
- 寒冷地の冷暖房効率を高める井水熱・地中熱の活用
- 季節や運用の変化に柔軟に対応する空調システムの採用
- 自然採光の最大化と照明消費エネルギーの最小化
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株式会社日建設計(本社:東京都千代⽥区、代表取締役社⻑:⼤松敦、以下「日建設計」)は、2024年10月1日、北海道オフィス新社屋の建設をスタートさせ、2日に起工式を行いました。2025年11月に竣工予定です。
【新社屋建設の背景】
豊かな自然と都市が共存する北海道では、近年、再生可能エネルギーの開発や宇宙産業の振興、ウェルビーイングの実現など、北海道の強みを生かした先進的な取り組みが進められており、持続可能な社会の実現にむけて、そのポテンシャルの高さを示しています。
このような中、日建設計は、北海道における活動をより一層加速させるため、グループ会社・北海道日建設計と2022年4月に合併しました。今般、建築・都市・社会環境に関する課題は複雑化しており、一企業だけで解決できるものではありません。新社屋は、積雪寒冷地でのZEBの実現、DE&I、Wellness、木質建築など今日的テーマに取り組みながら、未来の社会環境をデザインする拠点として、社内外の様々な知恵を結集して共創するプラットフォームとなることを目指します。
【新社屋の特徴/省エネのみで「Nearly ZEB」達成】
2024年9月19日、建築物省エネルギー性能表示制度(Building―Housing Energy-efficiency Labeling System、以下「BELS」)で、基準一次エネルギー消費量から75%以上の削減を示す「Nearly ZEB」の認証を取得しました。
新社屋は省エネのみで75%削減を達成しており、太陽光発電による創エネを含めると87%の削減となります。省エネのみでの「Nearly ZEB」達成は、北海道の建築物としては初めてとなります。
■脱炭素の動きが高まる北海道。一方で積雪寒冷地は冬季の暖房使用の影響でZEB化のハードルが高い
脱炭素社会実現に向けて、オフィスビルをはじめとした建築物のZEB化の必要性が高まっています。なかでも北海道では国の課題解決のために北海道が担うべき役割として新たに「脱炭素」が加えられたほか、札幌市でも環境首都・SAPPOROを目指した再生可能エネルギーの開発、市街地の脱炭素化が進んでいます。
北海道では暖房使用によるエネルギー消費の大きいことが、建築物のZEB化の大きなハードルです。これは、積雪寒冷地全般の脱炭素にとっても注力すべき課題であると考えられます。本オフィスでは、夏は冷涼な気候を活用するために外部に向かって開き、冬は内部に閉じ外部に逃げる熱を最小化するという寒冷地ならではの省エネの考え方を積極的に取り入れ計画を行っています。
■省エネのみで「Nearly ZEB」を達成するための具体策
Nearly ZEBの達成において、既存オフィスでの運用実績をもとに自社オフィスに求められる性能を再検討しました。そのうえで、断熱性の確保、自然換気や自然採光、自然エネルギーの活用と、高効率な空調・照明システムを組み合わせました。
北海道オフィスは、2025年11月に竣工を予定していますが、竣工後も、運用の工夫による省エネや再エネの利用拡大などによりZEBの実現に向けて取り組んでいきます。
①インナーテラス(緩衝帯+自然換気)を活用した冷暖房負荷の低減
西面の緑地に開いたガラスのインナーテラスは、換気塔の煙突効果により執務空間の自然換気を促進して、冷房負荷を低減します。さらに夜間に涼しい外気を取入れ、建物を冷やすことにより、立ち上がりの冷房負荷を低減します。冬の寒い時期はガラスの温室として日射熱を蓄え、暖房負荷を低減する緩衝帯として機能します。
②寒冷地の冷暖房効率を高める井水熱・地中熱の活用
井水熱・地中熱は年間を通じて温度が安定しています。井水を中温冷水として直接空調に利用し、熱源機の運転時間をできる限り短時間に抑えます(フリークーリング)。
猛暑時と冬期は外気の影響を受けない井水熱を利用する高効率なヒートポンプを稼働して冷暖房を行います。
また、新鮮な外気を地下ピットを通して取入れ、地熱による予冷予熱を行います(クールヒートトレンチ)。
③季節や運用の変化に柔軟に対応する空調システムの採用
室内に取り入れる外気は、室内から排出される空気と熱交換する全熱交換器を採用し、在室人員にあわせて外気量を絞ります(CO2濃度制御)。
北海道の中間期(春秋)は朝晩の気温差が大きいため、中温冷水と温水を選択できる冷暖自由な空調システムとしています。
また、1階には井水熱を利用した床放射冷暖房を併用し、省エネ性と快適性を高めます。
④自然採光の最大化と照明消費エネルギーの最小化
西面のインナーテラスから、執務室内に柔らかな自然光を採り入れます。また、執務室内の階段上部にトップライトを設け、室奥にも自然光を採り入れることで健康的な光環境を創出します。
照明制御システムは、居住者の生体リズムを整える制御に加え、昼光利用制御と在室検知制御により、照明消費エネルギーを最小化します。
■北海道オフィス建物概要(2024年9月現在)
・建設地:札幌市中央区北2条西14丁目3-6
・構造:RC造 一部 木造、鉄骨造
・階数:地上3階
・建築面積:503.26㎡
・延べ面積:1,382.57㎡
・施工者:株式会社大林組 札幌支店
・竣工予定:2025年11月
■日建設計について
日建設計は、建築・土木の設計監理、都市デザインおよびこれらに関連する調査・企画・コンサルティング業務を⾏うプロフェッショナル・サービス・ファームです。1900年の創業以来120年にわたって、社会の要請とクライアントの皆様の様々なご要望にお応えすべく、顕在的・潜在的な社会課題に対して解決を図る「社会環境デザイン」を通じた価値創造に取り組んできました。これまで⽇本、中国、ASEAN、中東で様々なプロジェクトに携わり、近年はインド、欧州にも展開しています。
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