絶滅危惧種のサドガエルは水田に水がない非灌漑期をどこで過ごすのか?
野外実験を通して、サドガエルは耕作放棄地を越冬場所として利用していることが判明
【本件のポイント】
・絶滅危惧種であるサドガエルの非灌漑期(ひかんがいき)における生息環境について、早急な調査と保全が必要
・生態調査と野外操作実験により、サドガエルは耕作放棄地を冬眠場所として利用していること、さらに植物が密生した草地
で枯れ草などに覆われた水域がサドガエルの越冬に適していることが判明
・水田環境における両生類の越冬環境を解明した本調査結果は、水田に生息する水生動物の生息に配慮した具体的な保全策の
提案に寄与
【本件の概要】
龍谷大学先端理工学部の岸本圭子 准教授(生物多様性科学研究センター兼任研究員)と、長野大学 環境ツーリズム学部の満尾世志人 教授らの研究グループは、前任校の新潟大学佐渡自然共生科学センター所属時の2018年10月〜2019年12月にかけて新潟大学大学院の学生と共に、佐渡島の固有両生類であるサドガエル(Glandirana susurra)の生態に迫る調査を実施し、耕作放棄地が越冬場所として有益であることを突き止めました。
本研究では、水田に水がない非灌漑期にサドガエルの上陸個体(幼体と成体)がどこにいるのかを特定するため野外調査を行いました。その結果、稲刈り直後は水路や田面を利用していること、冬が近づくにつれ、耕作放棄地やその脇の土水路に高頻度で出現していることが明らかになりました。また、放棄地内部では大きな水域で多くの冬眠個体が観察されたことから、サドガエルが耕作放棄地内部の水域で冬眠していることが示唆されました。
さらに、耕作放棄地のどのような環境がサドガエルの冬眠個体に適しているのかを明らかにするため、4つの植物被覆を操作した野外操作実験を実施しました。操作実験の結果、草刈りが行われた草地の開放された水域より、植物が密生した草地内の枯れ草で覆われた水域で、顕著に多くの冬眠個体が確認されました。植物被覆の役割は解明されていないものの、サドガエルの越冬には放棄地内部に残された湿潤な環境だけでなく、植物が密生した草地で枯れ草などに覆われた水域が必要であることが示されました。
実地で取り組む保全活動は科学的根拠がないままに進むことが多いのが現状です。本研究成果はサドガエルのみならず、水田に生息する水生動物の生息に配慮した具体的な水田整備を検討する上で重要な知見をもたらすものです。
【発表論文】
英 題:Where does the island-endemic frog Glandirana susurra survive during the nonirrigated season?
和 題:佐渡島固有種サドガエルは水田に水がない非灌漑期をどこで過ごすのか?
著 者:岸本圭子a b・佐藤亮c・小倉雅史c・満尾世志人a d
所 属:a新潟大学 佐渡自然共生科学センター朱鷺・自然再生学研究センター(研究当時) b龍谷大学先端理工学部
c新潟大学大学院 自然科学研究科大学院生(研究当時) d長野大学 環境ツーリズム学部
掲載先:国際科学雑誌「Agriculture, Ecosystems & Environment」Volume 381(Elsevier社)
DOI:
https://doi.org/10.1016/j.agee.2024.109433 ※オンライン掲載:2024年12月9日
研究資金:公益信託増進会自然環境保全研究活動助成基金(2019年、2020年)[助成番号J18G0130、J19G0123]
【研究の背景】
新潟県佐渡島に生息する固有の両生類サドガエル(Glandirana susurra)は環境省レッドリストの絶滅危惧IB類に選定され、保全策の確立など迅速な対応が求められています。しかし、本種は新種として認められるようになってから十数年しか経っておらず、生態についてはほとんど調べられていません。特に、水田から水がなくなる非灌漑期に、本種がどこに生息するのかわかっていませんでした。1年中水田で過ごす水生動物にとっては、現在の圃場や農法における非灌漑期を生き残ることは厳しく、保全のためにはこの時期の本種の生息状況の情報が必須です。
<研究内容に関するお問い合わせ先>
・龍谷大学先端理工学部 岸本圭子 准教授 kishimot@rins.ryukoku.ac.jp
・長野大学 環境ツーリズム学部 満尾世志人 教授 yoshito-mitsuo@nagano.ac.jp
・新潟大学佐渡自然共生科学センター sadojimu@adm.niigata-u.ac.jp
配信元:龍谷大学 研究部(生物多様性科学研究センター)
Tel 075-645-2184 e-mail ryukoku.biodiv@gmail.com
https://biodiversity.ryukoku.ac.jp/
長野大学 教育グループ 広報入試担当
Tel 0268-39-0020 e-mail kouhou@nagano.ac.jp
https://www.nagano.ac.jp/
新潟大学 広報事務室
Tel 025-262-7000 e-mail pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
https://www.niigata-u.ac.jp/
▼本件に関する問い合わせ先
龍谷大学 研究部(生物多様性科学研究センター)
TEL:075-645-2184
メール:ryukoku.biodiv@gmail.com
【リリース発信元】 大学プレスセンター
https://www.u-presscenter.jp/