東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座の鈴木慎助教と安保雅博教授らは、湖山リハビリテーション病院(静岡県)で山崎香辛料振興財団の支援を受け、スパイスとして広く用いられるクミン(Cuminum cyminum L.)の摂取が、性差を伴って体組成および脂質代謝に有益な変化をもたらす可能性があることを明らかにしました。
本研究は湖山リハビリテーション病院の研究倫理委員会(2022-1)により承認されています。
本研究の成果は、Cureus 誌に 2025年4月22日付けで掲載されました。
【研究概要】
クミンは伝統医学において消化促進や血糖・脂質代謝改善に用いられてきた薬用植物であり、近年の研究でも抗酸化作用や抗肥満作用が報告されています。本研究は、性差に着目してクミンの生理的効果を明らかにする世界初の試みです。
本研究では、健康な成人29名(女性16名、男性13名)を対象に、2か月間の非介入観察期間の後、1日2gのクミンパウダーを2か月間摂取、介入前後で体組成分析および血液バイオマーカーを評価しました。
<主な結果>
- 女性では、細胞内外水分比(ECW/TBW)の低下(約1.3%の改善)およびPhase angleの上昇(約8%改善)が認められ、筋質の改善が示唆されました。
- 男女ともにLDLコレステロール(LDL-C)が有意に低下(平均4.5%低下)しました。
- 一方で、HDLコレステロール(HDL-C)は男性でのみ有意に低下(女性の3倍以上の減少幅)する結果となり、性差の存在が示唆されました。
- 糖代謝マーカー(HbA1cやインスリン抵抗性指標)には有意な変化は見られませんでした。
これらの結果から、クミンの健康効果が性別により異なる可能性があり、個別化されたスパイス摂取の応用可能性を示唆しています。 |
【今後の展望】
本研究はパイロットスタディであり、参加者数やランダム化、対照群の不在といった制限もありますが、クミンの性別に応じた摂取効果を明らかにする上での重要な第一歩となりました。今後は、より大規模かつ層別化された臨床試験を通じて、最適な投与量や対象集団の特定を進める予定です。
【論文情報】
本研究の成果は、Cureus 誌に2025年4月22日付けで掲載されました。
Suzuki S, et al. Sex-Specific Effects of Cumin Supplementation on Body Composition, Lipid Levels, and Glycemic Profiles: A Pilot Study. Cureus. 2025 Apr 22;17(4):e82774. DOI: 10.7759/cureus.82774
【研究支援】
本研究は山崎香辛料振興財団(助成番号 269 287 290)より助成を受け行われました。
【研究メンバー】
東京慈恵会医科大学 リハビリテーション医学講座
助教 鈴木 慎
教授 安保 雅博
湖山リハビリテーション病院
リハビリテーション事業統括責任者 殷 祥洙
埼玉県立大学 作業療法学科/大学院研究科
教授 濱口 豊太