【京都産業大学】アルツハイマー病などの治療法の開発に期待。細胞老化を引き起こす仕組みを解明 -- 英国科学雑誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載



京都産業大学 永田和宏名誉教授、生命科学部 潮田亮准教授と生命科学研究科大学院生の山下龍志さんらの研究グループは、小胞体局在還元酵素ERdj5の機能不全が細胞内のカルシウムイオンバランスを攪乱し、ミトコンドリアの断裂化を引き起こすことで細胞老化を亢進させ、個体寿命に影響を与えることを解明した。




 小胞体は、細胞小器官の1つであり、タンパク質合成の場やカルシウムイオンの貯蔵庫として働いている。小胞体局在還元酵素ERdj5は、小胞体の働きを維持するために重要であることが明らかになっているが、ERdj5の生理的な重要性については、まだ明らかになっていなかった。
 今回、ERdj5を線虫や細胞で欠損させ影響を調べたところ、小胞体とは別の細胞小器官であるミトコンドリアの形態破綻が観察された。また、このミトコンドリアの断裂化はERdj5の欠損による細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を原因とするものであった。さらに、ERdj5を欠損した線虫では寿命が短くなり、哺乳類細胞では細胞老化が亢進することがわかった。
 以上の結果から、ERdj5を介した細胞内カルシウムイオン環境の維持が、細胞全体の健康維持に重要であることが明らかになった。このことは、ミトコンドリアの機能破綻によって引き起こされるミトコンドリア病や神経変性疾患などさまざまな病気の治療法開発に重要な知見をもたらすことが期待される。
 潮田准教授は「実は、ERdj5が小胞体でどのように活性を獲得するのか、その詳細はわかっていない。活性化メカニズムの解明は喫緊の重要課題であり、現在、我々の研究室ではこの謎に挑戦している。このメカニズムが解ければ、関連する様々な病気の治療や老化の予防など、開発の足掛かりになると期待している」とコメントしている。

 この研究成果は、2021年11月2日(日本時間)に英国科学雑誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。

むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

■関連リンク
・小胞体局在還元酵素ERdj5の機能不全は細胞内のカルシウムイオンバランスの攪乱を招き、細胞老化の亢進、個体寿命の短縮を起こすことを解明
 https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2021_ls/20211105_400a_ronbun.html
・京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科 潮田 亮准教授
 https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/ls/ushioda-ryo.html
・潮田研究室ホームページ
 https://ushioda-lab.com/


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