北里大学医学部の金子惇教授(横浜市立大学客員教授/研究当時:同大学院データサイエンス研究科)らの研究グループは、日本の医療における「へき地度」を表す尺度Rurality Index for Japan (RIJ)の更新・改定を行いました。RIJは金子らのグループが2021年の人口データを用いて作成し、2023年に発表されました。今回は2024年のデータを用いて更新すると同時に、離島の定義、直近の二次もしくは三次救急病院までの距離の測定方法を変更した6バージョンを作成しました。6つの尺度はいずれも医師偏在指標や平均寿命との相関は同程度であり、研究目的に合わせて利用可能です。厚生労働省の医師確保対策にも今回の改訂版(RIJ2024)が用いられており、本尺度を用いることで、「へき地*1」の課題の解決や魅力の発信に繋がると考えています。
本研究成果は、「BMJ Open」誌に掲載されました(2026年5月27日)。
研究成果のポイント
RIJは医療における「へき地」の程度を表す尺度として複数の臨床研究に用いられ、政策での利活用も議論されて来ました。RIJは郵便番号毎の人口密度、郵便番号の中心から直近の二次もしくは三次救急病院までの距離、離島、特別豪雪地帯の4つを組み合わせて一つの数値としたものです。2021年の人口データを用いたRIJ2021では病院までの距離は直線距離を用いており、「離島」については「二次もしくは三次救急病院がない離島」と定義していましたが、それらの定義が現状を十分に反映してない可能性を考慮し、データの更新と同時に複数のバージョンを作成し、それぞれの関連を検討しました。
研究内容
今回の研究では2024年データを用いたRIJ2024を作成すると同時に直線距離の代わりに道路距離・車での移動時間を用いた3バージョンと離島の定義を変更した2バージョンを掛け合わせた6バージョンを作成しました。いずれも0が最も都市部、100が最も「へき地」を表しています。図1は直線距離を用いたmRIJの地図(郵便番号、市区町村、二次医療圏、都道府県)であり、赤い色の濃い部分がmRIJが高いことを示します。
離島の定義はRIJ2021では「二次もしくは三次救急病院がない離島」を離島とし、それ以外は本土とし、離島に1、 本土に0という数値を設定していました。RIJ2024ではそれに加えて、「二次もしくは三次救急病院がない離島」を1、 「二次もしくは三次救急病院がある離島」を0.5、それ以外の地域を0としたmodified RIJ (mRIJ)を作成しました。離島からの道路距離や移動時間は本土における直線距離と道路距離の比を用いて算出しました。6つのRIJはいずれも高い相関を示し、医師偏在指標や平均寿命との相関は同程度でした。
研究チームとしては、医師偏在指標や平均寿命との相関に差がないことから、更新のコストが少なく制作過程での推計が入る余地が少ない直線距離のRIJ、特に離島をより細かく分類した直線距離のmRIJが主に用いられる指標と考えています。実際、厚生労働省の医師確保対策にも直線距離のmRIJが用いられています。加えて、研究目的によって道路距離や移動時間が重要な場合はそちらのバージョンを使用するなど、目的に合った利用が可能と考えています。
本尺度の使用を研究目的で希望される方は金子研究室のウェブサイトから申請していただければ研究目的の場合は無償で利用可能です。下記からお問い合わせください。
https://pcru-kanekolab.studio.site/contact
研究費
本研究は、日本学術振興会 科研費(24K02670)、厚生労働省 特別研究(25CA2044)、横浜市立大学学長裁量事業 第6期戦略的研究推進事業の支援を受けて実施されました。
論文情報
タイトル:Testing and evaluating updated variants of the rurality index for Japan: A nationwide methodological study
著者:Makoto Kaneko, Takaaki Ikeda, Sayuri Shimizu, Takuya Sato, Osamu Nomura, Yuki Soma, Machiko Inoue, Koichi Benjyamin Ishikawa, Shinya Matsuda
掲載雑誌:BMJ Open
DOI:
https://doi.org/10.1136/bmjopen-2026-117783